やるときゃやらなきゃダメなのよ

DR800SのエンジンOH 1

03年3月〜

入手の喜びもつかの間。煙を吐き出したDRのエンジン。

 

02年の秋、入手してまだ間もないDR800Sが、煙を吐くようになりました。エンジン始動時に煙が出ます。症状が段々悪化してきて、さすがに放置出来ず修理する事にしましたが、以前、DRのエンジンは整備性が悪くてシリンダーヘッドを外すだけでも車体からエンジンを降ろさなければならないという話を聞きました。考えただけでも大掛かりで時間を要するのは明らかですが、自然治癒に頼る訳にもいきません。とりあえず修理に掛かり、修理で乗れない間はピンチヒッターのSRXに乗ろうと思いきや、SRXもトラブル続出。修理の手間と費用は増すばかりで月日は流れど修理は進まず。ようやくSRXも何とか走り出した所で、放置していたDRの修理に取り掛かります。SRXでもう散々修理してるので、既にスタート時点からヘタれ気味です。

まず、エンジンの何処がどう悪いのかが一番の問題ですが、始動時に煙を吐く、走行中はほとんど出ない、しばらく乗らないと症状がひどい、等の症状から、バルブステムシール不良と思われます。バルブステムシールはその名の通りバルブステムのシールで、シリンダーヘッドにある吸排気バルブ部分からシリンダー内にエンジンオイルが進入するのを防ぐ為の物です。それを交換すれば良いのですが、その為には最低でもシリンダーヘッドは外さないと作業が出来ません。これは既にSRXで経験済みです。しかし先にも書きましたが、DRはエンジンを車体から降ろさないとエンジン整備が出来ません。フレームとエンジンの隙間が狭いのと、シリンダーとシリンダーヘッドをクランクケースから出ているスタッドボルトで固定している為、横にズラして外すという事が出来ないからです。整備性極悪です。とてもラリーレイドレプリカとは思えません。スズキのバカー! 泣く泣くエンジンを降ろす段取りをします。

エンジンを降ろすには当然ながらエンジンに関わる部分を全て外さなければなりません。サービスマニュアルを元に、サイドカバー、シート、バッテリー、タンク、エキパイ&サイレンサー、クラッチワイヤー、デコンプワイヤー、配線&ホース類、アンダーガード、ドライブスプロケット、ステップ、ブレーキペダル、オイルクーラー、キャブレター等を外し、エンジンハンガー&ボルトを外してエンジンを降ろします。センタースタンドで車体を立てた状態でエンジン下部をジャッキで支えてハンガーボルトを抜きます。邪魔な物を全て外してもフレームとの隙間が狭くて降ろす作業はかなり困難です。フレームのダウンチューブより下にオイルパン部分が出っ張っており、それをかわすのにかなりエンジンを持ち上げなくてはならないのですが、上は上でヘッドカバーがフレームに当たります。降ろす作業でこれでは、載せる時が思いやられます。

DR800Sのエンジン。

並列2気筒かと思う程デカい。重量は実測で57kg。

KTMのLC8(新型Vツインエンジン)はエンジン単体で58kgというから、

15年前のスズキの空冷シングルエンジンに、

もはや軽量コンパクトという優位性は感じられない。

 

些細な修理でもフルOHでも、エンジンを降ろさなければいけないDR。どうせ降ろすなら全て分解整備したいところ。前オーナーが入手する前に、一度エンジンはOHしているという話でしたが、僕が譲り受けた時点ですでに7万km近く走っているのでどこまで整備すれば良いのか見当がつきません。とりあえず分解しながら各部を点検し、必要な作業を判断したいと思います。そこで、エンジンを降ろした後、サービスマニュアルに従い分解点検していきます。部品やボルトが多いので、組み立てる際に何処の部品か、何処のボルトか分かるように仕分けしながら分解していきます。色々やり方はあるでしょうが、僕は100円ショップで購入したツールケースを使用。そこに部分毎にボルトや小さな部品を仕分けして入れて、何処の何の部品やボルトなのかを書いた紙切れを一緒に入れておきます。なかなか時間が取れない僕は、作業が完了するのがいつになるのか見当も付きません。短期間の整備なら何処の部品だったか思い出すことも出来るでしょうが、数ヵ月後に組み立てる際、何処の部品だったか思い出すことは困難です。後で組み立てる時になって困らないように、分解作業から気を配ります。

これは仕切り板が外せる、フタ付きのケース。

長い物も入れれるし、フタをすることで埃も防げるし、

重ねて収納出来るから場所も取らないし、

長時間放置するには、なかなか使い勝手が良いです。

エンジン整備だけじゃなく、普段の整備でも使うと便利。

長期間放置すると錆びてくるので、油分を除去しない方が良いです。

適度に防錆潤滑剤等をスプレーして、時々点検しましょう。

ヘッドカバー部

マニュアルでは左サイドのマグネトーカバーを外し、ヘッドカバーを外し、カムチェーンテンショナーを緩めてカムシャフトを外すと書いてあります。ヘッドカバーを外し、ロッカーアームを外します。不調の原因はバルブステムシールと思われるので、単に修理するだけならばロッカーアームの分解はする必要がありません。しかし先の通りかなりの距離を走っているエンジンですから、各部の消耗具合も点検する必要があります。そこでヘッドカバー側面のメッキされたキャップボルトを外し、ロッカーアームを保持するシャフトを抜きます。が、このキャップボルトが緩まない。8mmの六角レンチで緩めるのですが、固くてビクともせず、六角穴をナメてしまいました。年期の入った車体を整備する時は、この様な困難な状況に陥る事が多くて困りますが、いきなりピンチです。もう六角レンチで緩める事は不可能。通常のキャップスクリューと違い、飾りボルトの様な頭部が薄い形状をしているので、ボルト側面をペンチ類で掴んで回す事も困難です。とりあえずデコンプ関係の部品を外してボルト周りを広くして作業しやすいようにし、しっかりとした台の上にヘッドカバーを置いて、パイプレンチでボルトを掴んでレンチを叩く。インパクト的な衝撃をパイプレンチに与えてボルトを緩めます。何度か繰り返し、辛うじてボルトを外す事が出来ました。当然キャップボルトの再使用は不可能。ついでにキャップボルト部分のパッキンも新品に交換する必要があります。分解したところで、で部品の点検。シャフトの外径とロッカーアームの穴内径を測り、マニュアルの数値に則って判断します。

 

ロッカーアームシャフト標準値      11.973〜11.984

ロッカーアームシャフト測定値(EX側) 11.966

ロッカーアームシャフト測定値(IN側) 11.968

ロッカーアーム内径標準値        12.000〜12.018

ロッカーアーム内径測定値(EX側)   12.005

ロッカーアーム内径測定値(IN側)   12.005

 

測定してみると、あらら標準値より外れています。磨耗して使用限界を超えてしまったんでしょうか。しかしロッカーアームとシャフトを交換するとなると、結構な金額が掛かりそうです。お金無いしなぁ。替えるべきか、替えざるべきか。悩んでいる時に、ふとSRXのマニュアルを見ると、「標準値」以外に「使用限界値は11.950」と書いてあります。DRのマニュアルには「標準値」しか書いてありません。標準値とは製造する時の公差範囲を差しているんでしょうか。そうすると、今回の測定値はまだ使用に耐え得るものと判断しても良いんでしょうか。ロッカーアームの内径を見ても極度に磨耗している様には思えないし、良い事にしましょう。そうしましょう。しかしスズキのマニュアルは不親切です。英語だし。

ヘッドカバー部。

右端のメクラキャップボルトが外れなくて困りました。

前オーナーのオイル管理が良かったのでしょうか、

カムシャフト・ジャーナル(軸受)部分は新品かと思う程綺麗です。

ジャーナルが痛むとヘッドカバー本体、シリンダーヘッド本体の交換が必要となり、

掛かる費用も一気に増えます。

ちなみにDRのロッカーアーム(カムとバルブの仲立ちをするアーム)は、

1カムで2バルブを駆動するY字型が2個(画像右寄りの物)。

SRXは1カムで1バルブを駆動するタイプで、

ロッカーアームも4個あります。

独立したアームの方が追従性が良さそうな気がしますが、実際はどうなんでしょうね。

 

さて、ヘッドカバーはまだまだ序の口。次はシリンダーヘッドに取り掛かります。

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