やるときゃやらなきゃダメなのよ

DR800SのエンジンOH 3

03年3月〜

ビックリビックなシリンダー&ピストン。

 

シリンダーとピストンの清掃と点検

わざわざエンジン降ろしてここまで分解したのですから、シリンダーも外して点検してみます。シリンダーを外す事でコンロッドが現れるので、状態を見て腰下まで分解する必要があるかどうかもおおよそ判断出来るのではないでしょうか。それにシリンダーとクランクケースとの間から油がにじんでいる為、ガスケットの交換をする必要もあります。シリンダーはクランクケースから伸びるスタッドにより、シリンダーヘッドでサンドイッチされる様な形で固定されているので、ヘッドを外すと後は小さ目のネジ4ヶ所を外すだけで分解出来ます。ヘッド、ヘッドカバーもそうですが、分解する際、合わせ位置を決めるダウエルピン(筒状のピン)を無くさないように気をつけましょう。ピストンヘッドにはカーボンに隠れてかすかに「0.5」という刻印が見えます。0.5mmオーバーサイズのピストンです。シリンダー内部も極めて綺麗な状態ですから、やはり前オーナーの言う通り、確かに以前OHしているようです。シリンダーを外し、クランクケース内に異物が入らないようにコンロッド周りにウエスを詰めて、ピストンピンを留めるサークリップを外し、ピストンピンを抜いてピストンを外します。外したパーツを清掃し、点検します。

ところで、ピストン関係に限らず各部を測定するには当然測定器が必要になるのですが、寸法を測るといっても1/100mmまで測るのですから、定規やノギス程度では誤差が大き過ぎて役に立ちません。寸法を精密に測る為の専用の道具が必要になります。具体的にはシャフト外径を測る為のダイヤルゲージや、穴の内径を測るホールテスト等が必要になるのですが、これらの道具は高精度なだけあって価格も1個数万円とベラボーです。しかも高精度な分測定出来る範囲が狭く、例えば測定範囲が0.00mm〜25.00mmのダイヤルゲージでは、バルブステムは測定出来るけどピストンピンは測定出来ないということになります。全ての寸法を測定する為には測る物の大きさに合わせて何種類もの測定器が必要になってしまい、測定具を一通りそろえるだけでもうOHどころではない金額が掛かります。じゃあどうするのかというと、職場の物を借りるのです。職場の工作機械や道具が使えるからこの仕事をしている様なものですからね。うっしっし。

各部数値(mm)

ピストン ピストンピン穴径使用限界値         26.030

ピストン ピストンピン穴径測定値           26.014

ピストンピン外径使用限界値              25.980

ピストンピン外径測定値                25.988

コンロッド スモールエンド内径使用限界値       26.040

コンロッド スモールエンド内径測定値         26.020

コンロッド ビッグエンドスラストクリアランス標準値   0.10〜0.65

コンロッド ビッグエンドスラストクリアランス使用限界値 1.00

コンロッド ビッグエンドスラストクリアランス測定値   0.30

各部を測定して見ると、まだ大丈夫みたいです。ピストンは前回のOH時に交換しているので何ら問題無いでしょうが、コンロッドのスモールエンド部分(コンロッドとピストンを連結している部分)もまだ充分使用に耐えそうです。ビッグエンド部分(コンロッドとクランクシャフトの連結部部)の横方向のガタつきも標準値内に収まっているし、思っていたよりかなり状況は良さそうです。てな訳で、今回は腰上OHに留めておきましょう。そうしましょう。ホッ。ちなみに職場の道具を駆使しても100mm以上を測る事が出来るマイクロメーターが無く、ピストンとシリンダーは測定出来ませんでした。しかし前回のOHからそれほど走っていないようですし(1000km程度)、外観も綺麗ですから恐らく問題無いでしょう。

クランクケース部分。

クランクケースから伸びる4本のスタッドの為に作業が面倒になったんだけど、

組み付ける際はスタッドがシリンダーのガイドの役目を果たすので楽そうです。

クランクの横にオイルのノズルの様な物があります。

DRも油冷エンジンですから、ここからピストンの裏に潤滑油を噴射して冷却を促進しているのでしょうか。

冷却もさることながら、ピストン裏にオイルを噴き付けることで

スモールエンド部分も半強制的に潤滑されることになり、

耐久性の面でもメリットが有りそうな気がします。

コンロッドもデカいです。ストロークは90.0mm。

 

標準はφ105mmですが、前に一度OHしているので

φ105.5mmのオーバーサイズピストンが入ってます。

SRXも大きかったけど、DRはちょっと感動してしまう位バカデカいです。

大きさの比較にジャア専用ザグを置いてみましょう。

ジャアは「ええいっ!DRのピストンは化け物かっ!」というコメントをされています。

750には有るバルブリセスが、800には有りません。

また、SRXのようなくぼんだ形状でもなく、ヘッドは素っ気無いくらいまっ平らです。

前回のOHからあまり走っていないので、掃除したらとても綺麗になりました。

 

ピストンの裏側。

大きいけど、思ったより重くないです。ピストン単体の重量は実測530g。

これには水陸両用MSコックもビックリです。

純正品ですから当然鋳造だし、今時の超薄型ピストンから比べるとスカート部分も大型ですが、

肉厚も薄くて思ったより良い出来のように思えます。

アフターマーケットの鍛造ピストンにするとどうなるのか?

という興味も有りますが、DRのエンジン、

ノーマル状態で既に「やっちゃった感」が無きにしも非ずという気も。

 

単気筒800ccのシリンダー

ピストンが大きいという事は、当たり前ですがシリンダーも大きいです。

細かなピッチで刻まれた冷却フィンがスズキの油冷エンジンという感じ。

5mm厚の鉄スリーブが入った極普通の物です。

とても重いですが(実測5420g)、質実剛健な感じで耐久面では余裕がありそうな印象を受けました。

最近はシリンダーも軽量なスリーブレスのメッキシリンダーが増えてますが、

耐久性や長い年月愛用し続ける事を考えると、オーソドックスな鉄スリーブも悪くないかも。

 

さて、7万kmも走ってる割には思ったより消耗していないようです。今までのメンテナンスが良かったのか、前回のOHで完全整備していたのか分かりませんが、これなら10万km程度は軽く走れそうな感じです。そこで、今回分解するのはシリンダーまでにしておきます。後は必要な部品を購入し、組み立てるだけです。ここで一番問題なのは、部品代が出てくるんかいな?ってことでしょうか(-_-;)

 

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