やるときゃやらなきゃダメなのよ

DR800SのエンジンOH 5

03年3月〜

折り返しでやんす。

もうだいぶ嫌気が差してます。

 

修理個所、交換部品に目処がついたところで、交換、組立作業に入ります。まずはエンジン下部から作業を進めましょう。そこで最初にフライホイールを外し、バランサーチェーンの交換を行うことにします。度々書いてますが、DRのエンジンはちょっと変わっていて、通常はギヤで駆動するバランサー(エンジンの振動を打ち消す為に空回りさせるおもり)を、チェーンで駆動しています。距離を走ればチェーンも伸び、伸びるとタイミングがズレて振動が悪化します。また、カムチェーンは直接クランク軸に掛かっておらず、バランサーと同軸のスプロケットに掛かっている為、バランサーチェーンの伸びはカムチェーンにも影響を与えかねません。前回のOHでは交換していないようなので、今回は交換しておきたい部品です。しかしこの作業がなかなか困難。

バランサーチェーンを交換するには、フライホイールを外さなければいけません。フライホイールというのはクランク軸の端に付いているはずみ車で、マグネトーカバーを外すと見えます。はずみ車ですから、かなり重たいです。それがクランクと一緒にすんごい勢いでぐるんぐるん回るのですから、相当しっかりと固定されているはずです。それを外すのに、専用工具が必要になる訳です。

まず最初に、フライホイールをクランクに固定しているボルトを外さなければいけませんが、レンチを掛けてもクランクが回ってしまって、そのままでは緩める事が出来ません。そこで、共回りしないようにフライホイールを固定しておく必要があります。フライホイールをバンド状の工具で締め上げて固定するのが一般的みたいですが、DRの場合はフライホイール側面に対角に穴が空いており、そこに工具を引っ掛けて固定するようです。専用工具を使うに越した事はありませんが、頻繁に使う物でもないし、その割には高そうだし、寸法を測って自作することにします。フライホイール固定ボルトはM14の細目ピッチのボルトですが、ネジロックが塗布してあるので外すのも一苦労です。

ボルトを外したからといって終りではありません。次にフライホイールをクランク軸から抜き取るのですが、ここでも専用工具が必要。普通はフライホイールにネジ穴が空いていて、スタッドボルトを使って引き抜くようですが、DRにはネジ穴がありません。代わりにフライホイールのセンターにM42の雄ネジが切ってあります。ここに専用工具をねじ込んで抜くのですが、M42−P1.5の雌ネジは大きい上にかなり細かいピッチなので、そこら辺では入手出来ないし、会社で用意することも出来ません。フライホイールの回り止めに使った側面の穴を利用して抜き取り治具を作ってみましたが、全く抜ける気配無し。やはり専用工具でなければ抜けないのでしょうか。無理をしてフライホイールやクランク軸を傷めては元も子もありません。しかしたった1度使うだけの為に高価な専用工具を買うのもバカバカしいです。1ヶ月以上途方に暮れていましたが、会社のツテを頼りなんとかM42−P1.5のナットを購入し、専用工具を自作。ココまでの苦労、ハッキリ言って素直に専用工具買った方が早いです(-_-;)

渾身のハンドメイド・フライホイールプーラー。

なかり特殊な物なので、他の物を流用する事も難しい。

M42−P1.5のナットにM16のタップ(雌ネジ)をたてた物を溶接。

M42のナットをフライホイールにねじ込んで、M16のボルトでクランク軸を押して抜く。

回り止め用の握り棒が溶接してあるので作業性が悪いけど、

どうせ1回コッキリしか使わないのだから改良する気も無い。

掛かった費用はM42のナット代2000円。

正規の特殊工具がいくらするのか分からないけど、掛かった手間を考えると決して安くない。

それでもなおハンドメイド工具にこだわり続けるのは、『余計な物に金を掛けたくない』の一言に尽きる。

 

M42のネジを使うと、フライホイールはあっけなく抜けました。DR以外には全く役立たずな、しかも抜く時にたった一度だけしか使わない小憎たらしい専用工具ですが、作用点が近いのでフライホイールにストレスを掛ける事無くスムーズに作業できます。クランク軸とフライホイールのはめ合い部分は先細りのテーパー形状ですから、最初さえ緩めば後は簡単に外れます。フライホイールを外し、クランク軸にハメ込んであるキーを抜き、スターターのギヤを抜きます。バランサーチェーンガイドを外すとバランサーチェーンの全貌が見えますが、チェーンテンショナーを外してもチェーンは外れません。バランサー軸のスプロケットとクランクケースの隙間が狭いので、スプロケットを外さないとチェーンが外せないのです。で、スプロケットを外すのに、またもや専用工具が。バランサーが空回りしないように固定する専用の道具が必要です。もう専用工具のオンパレード(-_-;)。タダでさえ金が無くて部品が買えないというのに、専用工具など買ってられるかっつーの。何だかOH作業よりも専用工具を作る作業の方が大変な気がするんですが、もうこうなったら意地でも自作。奥まっているスプロケットを外すには工具をオフセットする必要が有り、強度的に少々心配ですがそうそう頻繁に使う物でもないので使い捨てでも構いません。なんとか外す事が出来ました。

今回使用した特殊工具3点。

左からフライホイールの回り止め、フライホイールプーラー、バランサーチェーンスプロケット回り止め。

フライホイールを抜く時に、M16のボルトでクランク軸端を押すのですが、

軸端にはフライホイールを固定するネジ穴が空いています。

強い力で軸端を押してネジ穴が傷むと厄介なので、

ボルトと軸端の間にφ19弱×30mmくらいの噛まし物を入れます。

どれも頻繁に使う物では無いので仕上げも適当で良いのです。

 

こんな所でこんなに苦労するとは思いませんでしたが、どうにか分解する事が出来ました。あとは新品の部品を購入して組み立てるだけ。資金難で、部品も必要な物を一気に全部購入することが出来ないので、とりあえず始めに必要なバランサーチェーン、カムチェーン、ピストンピンのサークリップ、シリンダーガスケットを注文して、シリンダー部分まで組み立てることにします。これらでおよそ1万円強といったところ。んが、しかし、届いた物はサークリップとガスケットのみ。チェーンは「納期未定」だそうです。納期未定?(-_-;) 手に入らない事はないと思うけど、いつ届くか分かりませんよ、と。98年頃まで製造していたバイクの機関パーツが『納期未定』ですよ、スズキさん(-_-;)

そして僕のやる気はますます衰えていくのです。一体いつになったら直るんでしょうねぇ。

 

今回の出費

ハンドメイド・フライホイールプーラー(M42ナット) 2,000円

 

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