やるときゃやらなきゃダメなのよ

DR800SのエンジンOH8

04年7月

さぁ、祈りなさい。

エンジンがかかりますように。

 

エンジンのOH作業自体は終わり、車体にも載せました。後は外した部品を組み付ければ終了ですが、ついでにキャブレターの掃除とサイレンサーの補修を行ないます。正常なエンジンには、正常な吸気と排気が必要。

 

ケーブル類

エンジンに関する配線類はとても少ないので、戻すのも簡単。ダイナモから出ているケーブルと、エンジン後方のニュートラル検出のケーブルだけ。それとブローバイのホースくらいです。その他に、イグニッションコイルや、キャブレターを取り外す際にバッテリーケースを外しましたが、そこにゴチャゴチャと電装品が有ります。戻す時に電線類が無理をしていないか、被服が剥けていないか等、確認します。古いバイクの場合、時々ハーネスやケーブルが本来の取り回し方ではない場合があります。マニュアルの指示通りの取り回し方がベストとは言いませんが、ハンドルを切ると引っ張られたり、可動部で擦れたり、シートやカバー類で挟んだりするのは論外です。一般的にあまり電線類には気を配られていない傾向が有るよう思えますが、電線を粗雑に扱うとマイナートラブルの元になりかねません。ほんのちょっとの手間が掛かるだけでお金は掛かりませんので、整備する時は気を配ってみましょう。

今回は、バラしたついでにアーシングを施してみました。以前DR750Sで行なった手法と同じですが、今回はイグニッションコイルとセルモーターも個別にアース線を引いてみます。

 

キャブレター

エンジンを下ろす時に取り外したキャブレター。見るとエアーフィルター側がひどく汚れています。エンコする前に走ったBBMが悪かったみたいで、フィルターで取り切れなかった土埃がキャブレターに入り込んでいます。キャブレターを取り付ける前に掃除しておきます。取り外して内部のガソリンを抜いておいたので、1年半以上放置したにも関わらずジェット類は綺麗で汚れや詰まりは有りません。しかし、フロート室にも細かなゴミが溜まっているので一通り洗浄。ダイヤフラムも問題無さそうです。簡単な洗浄だけで問題無いでしょう。

キャブレターのボックス側。

細かな土埃が付着してイヤ〜ンな感じ。

キャブレターをエンジンに繋ぐインシュレーターですが、固定にM6の+ネジが使われています。bRの+ドライバーを使うのですが、トルクが掛け難いのと、フレームやエアークリーナーボックスが邪魔で普通のドライバーが入らないのが問題。そこで、+ネジからM6×20mmのキャップスクリュー(六角穴付ボルト/六角レンチで回すボルト)に変更します。微妙にインシュレーター本体が邪魔になるので、作業のしやすさではキャップスクリューがベスト。ただ、トルクが掛け易い分、締め付け時にオーバートルクになる可能性もあります。シリンダーはアルミ合金ですから比較的柔らかく、ネジ穴をナメやすいので締め付け加減は注意が必要。

キャブレターに接続される燃料ホースは標準では黒色ですが、古いバイクや信頼性に乏しいバイクの場合、市販の透明チューブに替えると便利です。以前SRXで燃料系トラブルに見舞われて悩んだ事がありますが、ホースが透明だとホースを外したり、フロートのドレンをイジらなくても燃料が正常に供給されているかどうかが判断出来ます。全てを透明チューブにする必要はありませんが、一部分を交換しておくと困った時に便利です。また、古くなるとホースが硬化して漏れの原因になったりしますので、心配な時は思い切って交換しましょう。

Ksukeさんの有益情報 その1

内部は綺麗とはいうものの、キャブレターに全く問題が無い訳では有りません。負圧で開閉するピストンバルブのガイドが磨耗しています。DR750の時でもそうでしたが、ピストンバルブが上下に動く際、ガイドと擦れて磨耗するようです。磨耗が進行するとピストンバルブのガタが大きくなり、ピストンバルブに付いているニードルと、ニードルジェットが干渉して、ニードルの一部が磨耗してしまい不調の原因となります(ニードルが磨耗した部分で濃くなり、息つきを起こす)。しかし、ピストンバルブは部品として購入出来るものの、このガイドが部品として出ません。ニードルとニードルジェットを交換する事で一時的には直すことが出来ますが、根本的に直すにはキャブレターASSY交換となってしまう貧乏人には身の毛もよだつ恐ろしいキャブレターです。しかし、BMW F650Funduroに乗るKsukeさんから有益な情報を頂きました。BMWのF650に同じミクニのBST33が使われており、BMWではガイド(キャリアという名称らしい)が部品として購入出来るそうです。さすがはBMW。F650でも同様の症状が出ているところからこのキャブの持病のようですが、特に吸入負圧が強いビッグシングルでは磨耗が激しいようです。ちなみにバンディッド400にも同じ型のキャブレターが使われていますが、こちらはDR同様ガイドだけを購入する事は出来ません。

僕のDRも7万km走行し、ガイドも一目で分かるほど磨耗が進行し、バリも出ています。ガイド、バルブ、ニードル、ニードルジェットを交換する事でほぼ新品の状態にリセット出来ると思いますが、これだけの部品を交換すると恐らく2万円くらい掛かるのではないかと。今回はこのままフタをしておきますが、ニードルの表面には磨耗痕が有ることから、そう長くは持たないでしょう。

キャブレター内部、ピストンバルブのガイド。

画像では分かり難いですが、矢印の部分で一目で分かる程磨耗してます。

この白いパーツが純正部品では購入出来ません。

Ksukeさんの有益情報 その2

上記の通りDRにはミクニのBST33というキャブレターが使われているのですが、これはバンディッド400と同じ型式。そのバンディッド400には、ヨシムラからMJN(マルチプル ジェット ノズル)がリリースされています。あの、高効率ジェットシステムのMJNです。もちろんヨシムラでは「車種ごとにセッティングされているので、他車種に使用するな」と言っていますし、400cc4気筒と800cc単気筒ではセッティングもかなり異なるとは思いますが、上手くいけばマイナーなDRの有効なチューンの1つとなりそうです。MJNはバンディッド400の他に、グース350用もリリースされています。400cc4気筒用の半分を使うよりは、350cc単気筒用を2個使った方がDRには相性が良さそうな気がしますが、グースのキャブは口径が異なります。口径が違っても内部パーツの寸法が同じなら使えそうですが、その辺りの詳細なデータは分かりません。

僕も早速オークションで検索して、バンディッド400用の新品未使用品を安く手に入れました。が、エンジンOH後は一度全部ノーマルに戻して確認してみたいところ。しかも随分長い間DRに乗っていないので、DRがどんな感じだったかすっかり忘れてしまい、こんな状態でイジっても変化を確認出来ません。ノーマル状態でしっかり走ってからMJNを組んだ方が良いのですが、それならMJNよりも先に買うべき物が沢山有った様な気もしなくは無い気もする様なしない様な。

 

サイレンサー

今まではFMFのXR400R用サイレンサーを着けていたのですが、競技用の為あまりにうるさい。車検も通さなければいけないし、OH後の確認はノーマルサイレンサーの方が良いだろうし、寡黙でジェントルで大人のダンディな僕には爆音サイレンサーは似つかわしくないし、ノーマルに戻します。

しかしDRのサイレンサーは鉄製で表面が錆だらけ。そのままでも使えないことはありませんが、放置すると朽ち果て穴が空き、結局ナチュラル爆音サイレンサーになってしまいそうな予感。浮いた錆を何とかして、塗装を施したいところ。塗装し直すためにヒートガードを外そうとすると、ボルトが完全に固着しています。固着したボルトは無理やりネジ切って除去し、折れ込んだ部分にドリルで穴を空けてタップを立て直します。大まかな錆を落として塗装しますが、サイレンサーの裏側は後輪が巻き上げる泥はねが当り、スプレー塗料を上塗りしたくらいではすぐに錆びてきそうです。出来れば車の下回りに塗る様な弾力性のある厚めの塗料を塗りたいのですが、耐熱性が有るとは書いてありません。錆止め塗料もしかり。そこで、赤錆転換防錆剤を使ってみる事にします。赤錆転換防錆剤というのは錆を落とすのではなく、赤錆をより科学的に安定した酸化鉄に変化させる事で新たな錆を防ぐ物だと思うのですが、筆で塗るだけでOKという手軽さがズボラな僕には魅力。早速サイレンサーに塗ってみます。ついでに保管中の予備のエキパイにも塗っておきます。保管中に錆だらけになって使えなくなってしまう、なんて事が防げそうで結構便利。ただし、説明文によると耐熱温度は80℃で、マフラーやエンジン周りに使うと問題が生じるかもしれません。使う時は自己責任で。説明書には2度塗りしろと書いてあります。液剤が乾燥した後に耐熱塗料で塗装。夏場はすぐ乾燥するので、2、3回上塗りし、なるべく塗装を厚めにしておきます。

全体に錆が浮いたサイレンサー。

これ以上進行させない為にも、何らかの処置をしておきたいところ。

 

そこで、赤錆転換防錆剤。

筆で塗るだけというサルでも出来るお手軽ケミカル。

一応筆が付属してますが、サイレンサーの様な大きな物を処理する場合は

もう少し大き目のハケを用意すると作業がはかどります。

以前は素人向けリペア用品というとホルツが強かったと思うんですが、

SOFT99もかなり充実してきてます。

パッケージも分かりやすく、無料の電話サポートも有るし、

素人でも気軽にやれそうな感じ。

 

サイレンサーは今回作業したDR800S用純正サイレンサーの他に、以前乗っていたDR750S用のサイレンサーが予備として保管してあります。750用も800用も外観は大差無い様で、取り付けも同じなんですが、形状が微妙に違います。内部構造までは分かりませんが、一応高年式ほど改良されているんじゃないでしょうか。エキパイは同じみたいです。

 

始動の前に

キャブもサイレンサーなど一通り整備したところで、いよいよエンジン始動。だけどその前に充分潤滑しておきます。始動する前に、OHによって失われた潤滑油を、エンジン内部に行き渡らせておきたい。使用するオイルは、WAKOSの4CT。以前使っていたホンダのULTRA−GPと比べると値段は倍になりますが、これはDRの以前のオーナーが前回のエンジンOH後から使用していた物で、今回エンジン内部がかなり綺麗な状態を保っていた事から、信頼出来るものと判断したからです。

ます、ヘッドカバーのタペット調整用カバーを外して、オイラーを使ってエンジンオイルを注油。エンジンを始動してもヘッドまでオイルが回るには多少時間が掛かるので、なるべくオイルがカムやロッカーアームシャフト辺りに行き渡るように。その後、エンジンオイルをフィラーキャップ部分から注ぎ、マグネトーカバーのメクラ蓋を外してクランクを回します。オイルポンプが各部にオイルを送るように、クランクを反時計回りにグルグルと回します。圧抜きの為にスパークプラグは外しておきます。反時計回りというとボルトを緩める方向なので、激しく回すとちょっと心配なのですが、フライホイールのボルトがそう簡単に緩む事は無いでしょうから、気が済むまでグルグル回します。ひょっとしたら、バッテリーが上がっても、ラチェットと17mmのソケットでエンジンが掛けられるかもしれない、と、ちょっとバカな事を考えつつもグルグル。エンジンオイルを回した所で、オイラーにガソリンを入れてキャブレターに燃料を送ります。何故タンクを付けないのかというと、もし修理に失敗して再び整備が必要となった時に、あの巨大なタンクを外すのがウザいから。とりあえず一度始動してみて、正常に動くのを確認してからタンクを付けます。かなり弱気ですが、大人になるとね、臆病になるものなのよ。

さて、スターターボタンをポチッと押します。長年使い、しかも長期間放置して弱ったバッテリーですが、充電したら結構な勢いでセルを回します。凄いぞ。アーシングの効果でしょうか。それとも念入りに組み立てたお陰でフリクションロスが低減したとか。それとも断末魔の叫び?(バッテリーの)。とにかく、3回目のセルで無事始動。始動直後にエキパイ付近からモクモクと白い煙が立ち昇りますが、慌てる事はありません。以前も同様の症状が出てビックリしましたが、エキパイやサイレンサーに塗った耐熱塗料が焼ける時に出る煙で、エンジンの異常ではありません。耐熱塗料を重ね塗りしたお陰で白煙がもうもうと上がりますが、気にしてはいけません(ちょっと腰が引けてますが)。無事始動したのを確認して、巨大なタンクを載せます。

エンジン始動。

失敗した時の事を考えてタンクを付けずに始動してる辺り、

ちょっとヨワヨワというか腰が引けてます。

エキパイ付近から煙が出てますが、排気口から出てる訳じゃないので

気にしてはいけません。そのうち収まります。

 

エンジンは無事に始動しました。実際に走行してみないと本当に異常が無いかどうかは判断出来ませんが、非常に長い期間掛けて行なってきたDRのエンジンOHもひとまずは終了です。

 

今回の出費

オイルフィルター   16510 37440                 860円

ステップ ボルト   09103 10124                    ?

ガスケット(エキパイ)14181−44B00                 520円

エンジンオイル    WAKOS 4CT 10W−50 @2,000×3 6,000円

赤錆転換防錆剤    SOFT99                    1,025円

耐熱塗料(黒)    SOFT99                    1,025円

                                   計 9,430円

 

明細を貰い損ねたので、正確な部品の金額が分かりません。別途部品の送料が掛かります。こまめに買うと送料だけでも馬鹿になりません。エキパイフランジのガスケットは面倒なので古いのを再使用しようと思ったら、既にうっかり捨てていたみたいで仕方なく新品を購入。他にも、オイルクーラーの配管フランジ部、タペットカバー、セルモーター、インシュレーターのOリング、デコンプシャフトのオイルシール等は、分解時に新品にするのが望ましいのですが、この辺りの物はエンジンを載せた後からでも整備が可能なので今回は古い物を使っています。エアーフィルターも新品にするべきなのかもしれませんが、前回交換した直後に故障したということでそれ程汚れていないだろうという判断から、そのまま使用します。

WAKOSのエンジンオイルは定価が2,200円/Lくらいだったと思うのですが、バイク屋さんの厚意で割安になってます。WAKOSのオイルはドラム缶単位くらいにならないと値引きが無いのですが、お店でオイル交換をお願いする訳でもないのに申し訳ないです。

防錆剤は先に書いた通り耐熱温度が80度です。エキパイやサイレンサーに使って良い物かどうかは分かりませんので、使用する場合は自己責任で。心配な場合はフリーダイヤルのサービス窓口で聞いてみましょう。

 

前のページ     次のページ

戻る

inserted by FC2 system