言葉に出来ない

DR800Sのエンジン再再修理

05年2月

ラーラーラー♪ララーラー♪(泣)

いきさつ

修理後、しばらくは問題ありませんでした。もう外装やカウルを元に戻しても良いかな、と思ったその時、僕の視界が白く霞んだのです。DRのマフラーから、もうもうたる白煙が立ち上るのです。僕は、ステージで熱唱するジュリーさながらの白煙に包まれて、呆然と立ち尽くすのです。

作業

呆然としていても直らないので、気を取り直して再度エンジンを降ろします。こうなったら、直るまで何度でも降ろします。降ろしてバルブ周りを見ると、やはり吸気バルブからのオイル下がりの様子。吸気バルブを外す際、オイルシールとの当り面付近で、若干の引っ掛かりを感じます。新品のバルブに交換したのでバルブ本体には問題無いはずなのですが、念のためシールが当たる近辺を磨いておきます。SRXの修理の時も同じ事を書いてます。僕の作業に何か問題が有るのかも。

バルブを新品に交換していない排気側は問題無いし、オイルラインのオイルがヘッドガスケットを抜けた様な形跡もありません(DRのエンジンは、シリンダーを固定するスタッドボルトの貫通穴がオイルラインとして使われている)。排気バルブも新品にするべきか悩んだものの、前回吸気バルブが磨耗している訳ではない事が分かったのと、排気バルブ側にはオイル下がりの症状が出ていない事から、バルブステムシールのみ交換するつもりだったのですが、極稀にバルブコッタが割れたり外れたりする事があるので、コッタも替えた方が良いという話を聞いたので、コッタも注文しておきます。バルブコッタというのはバルブの先端部分にはめ込む小さな金属片ですが、コレでバルブスプリングとバルブを保持しています。コッタが外れるという事は=バルブが外れるという事で、外れたバルブはシリンダーの中へサヨウナラ。そして上がってきたピストンとコンニチハ。エンジンは1発でオシャカです。マニュアルには「交換しろ」とは書いてありませんが、既に7万km走ってるエンジンなんですから、交換します。コッタは1個100円。4バルブ1式分でも800円です。惜しむ必要は有りません。

バルブとバルブコッタ(上の小さいの2個)。

バルブ先端の溝にはまって、スプリングを保持している。

コッタに不具合が生じると大惨事になるので、

新品に交換しておきます。1個100円だし。

ちなみに画像は古い物です。

新品や、再使用するパーツは、地べたに置かない方が良いですよ。

バルブを組みます。もう何度もやっているのでお馴染みの作業ですが、何度も失敗しているという事は、何処かで同じ過ちを繰り返しているのかもしれません。注意して作業します。前回は慌てて作業した為に、初期潤滑がしっかりと出来ていなかったかもしれません。バルブステムやシール部分にグリスとオイルを塗る塗るしておきます。作業時の画像が有りませんが、やってる内容は以前と全く変わらないので画像も変わりません。撮るだけムダなので、過去のコンテンツを参照して下さい。

後は元通りに組み立てるだけなんですが、その前に1つ問題が。実は分解時にカムチェーンが外れてしまいました。カムチェーンはカムシャフトを動かす為のチェーンで、エンジン左側のマグネトーカバー内に有るバランサーの軸(駆動側)と、カムシャフト(従動側)に掛かっています。シリンダーヘッドを分解する際、カムシャフトからカムチェーンを外し、通常はエンジン内部に落とさない様に針金等で吊っておくのですが、分解作業を終え、カムチェーンを引っ張り上げたら、カムチェーンが出てきてしまいました。バランサーの軸から外れてしまったみたいです。戻すにはマグネトーカバーを開け、バランサーの軸に掛けるのが一番確実なのですが、そうするとエンジンオイルが抜けてしまうし、カバーには石綿状のガスケットが使われているので再利用が難しい、と言うか、ガスケットを剥がして当たり面を綺麗にするのが非常に面倒臭い。既に必要な部品は発注済みなので、新たにガスケットを注文するのも2度手間だし。そこで、なんとかバラさずにカムチェーンを掛けられないものか、と四苦八苦。シリンダーまで分解してあるとまだ楽なのですが、シリンダーもマグネトーカバーもバラさずにカムチェーンを掛けるのはなかなか難しい。というか、何でこんな狭い所から外れたんだ?コツとしては、エンジン前側を持ち上げ(ウイリーみたいな感じ)、カムチェーンを垂らした先にバランサーの軸が来る様にして作業します。シリンダーヘッドを組んだ後でハメるのは不可能だと思いますので、分解、組み立て時にはカムチェーンをあまりたるませない方が良いですね。

全部組んでしまう前に、キャブレターのジェットニードルを交換しておきます。前回の作業後の試運転時に、アイドリングが不安定になる症状が出ました。ニードルが磨耗して、混合気が濃くなり、不安定になったのではないかという予測から(以前、DR750の時に同様の症状が出た)。結果的にはパイロットスクリューの調整不良だったのですが、ニードルには明らかに磨耗痕が有るので、この際新品に交換しておきます。本来ならニードルとニードルジェット(ニードルが収まる真鍮製の筒)と組で交換するのが望ましいのですが、ピストンバルブにガタが有る状態では新品を付けても再び磨耗するはずですから、根本的に直す時に一式交換する予定(ニードルジェットは値段が高い)。根本的に直すには費用が掛かるので、とりあえず応急的にニードルだけ。

キャブレターのジェットニードル。

茶色い汚れよりも、その下(画像で言うと右寄り)の磨耗痕が問題。

磨耗が進行すると、混合気が濃くなって不具合が生じます。

本来擦れることはないニードルが磨耗するのは、

ピストンバルブにガタが有る為と思われます。

そうすると、根本的に直すには、

ピストンバルブのガイドと、ピストンバルブを

交換しなければなりません。

それらを交換し、キャブを完全にリセットした状態で

バンディッド400用のヨシムラMJNも付けてみたいのですが、

とりあえず、まずはエンジンを直さないと。

不調の原因

今回も原因が特定出来ないままなのですが、DRに乗るバイク屋さんから幾つかアドバイスを頂きました。その中で今まで見落としていたものに、「ブリーザーパイプの詰まり」があります。ブリーザー(※参照)から圧が抜けないと、ヘッドカバー内部にも圧力が掛かり、バルブステムシールからオイルが抜ける可能性も無きにしも非ず。ブリーザーのホースは、ヘッドカバーからエアークリーナーボックスに入っています。ホースに問題が無くても、途中タンクで挟んだりする事もあるので、注意した方が良いそうです。

ブリーザーの確認方法として、オイルフィラーキャップにオイルジョッキのノズルを密着させ、オイルがスムーズに注がれるかどうかで判断出来るというアドバイスを頂きました。オイルを入れる時に確認出来れば余計な手間が掛からず簡単なのですが、今回はシリンダーヘッドしかバラしていないので、オイルは抜いていません。継ぎ足す必要も有りません。そこで、タンクを取り付けた後でオイルフィラーキャップを空け、エアークリーナーボックスからブリーザーホースを外し、口にくわえてフーフーしてみます。ちょっとバッチイけど、愛車の確認の為ですから我慢しましょう。何の抵抗も無くフーフー出来るので、途中で詰まっている事はなさそうです。

(※)ブリーザー

ブリーザーというのは圧抜き用の通路の事で、エンジンに限らず色々な所に有るのですが、エンジンに関して言えば、クランクケース内部の圧力を逃がすもの、ヘッドの内圧を逃がすもの、などが有ります。もし、クランクケースが密閉されていると、ピストンが下降した時にピストンの下側の空気の逃げ場が無く、クランクケース内に圧力が掛かってしまいます。逆にピストンが上昇する時には負圧が掛かります。また、エンジンが高温になれば内部の空気が膨張して圧が掛かるし、冷えると収縮して負圧が掛かります。その様なエンジン内部の不要な圧力は、効率を悪化させ、また、オイル漏れなどのトラブルの原因になります。DRの場合はクランクケースのみの独立したブリーザーは無く、シリンダー、シリンダーヘッドを貫通した通路を設け、ヘッドカバーから開放している様です。ブリーザーから放出される空気はエンジンオイルのミスト分を含んでいるので、ホースを通じてエアークリーナーボックス内に入れられ、エンジンによって燃焼させられます。

試運転

エンジンを掛ける前に、ヘッドの潤滑をしておきます。シリンダーヘッドのオイルは、オイルポンプから汲み上げられて、オイルクーラーを通って、ヘッド側面の通路に導かれるのですが、エンジンの脱着でオイルクーラーを外しているので、ヘッドまでオイルが回るには少し時間が掛かるはずです。組み立て時にヘッド周りにはエンジンオイルを掛けておきましたが、そのまま始動するのは不安が有ります。前回はマグネトーカバーに有るキャップを外し、クランクを回したのですが、これがフライホイールを固定するナットを緩める方向に回さなければならないのがちょっと心配。そこで今回はリヤタイヤを回してみました。センタースタンドでリヤタイヤを浮かせ、ギヤを5速に入れてタイヤを回します。この時、スパークプラグを外してシリンダー内の圧力を逃がしてやります。ビッグシングルなのでリヤタイヤで回すのは困難かと思いきや、意外に回せます。これなら心置きなくエンジンを空回し出来ます。しかし、手でクルクル回した程度でオイルポンプはちゃんとオイルを送るんですかね。気温が低いとオイルも硬いけど、ちゃんと送るんですかね。ちなみにピストンの上下に伴い、タイヤを回す抵抗の増減が激しく、車体がかなり揺れますので、センタースタンドが無い場合はあまりお勧めできません。

ひとしきりタイヤを回した所でプラグを取り付け、ニュートラルにして、エンジンスタート。途中セルを回してもエンジンが掛かる気配が無く、少々青ざめましたが、単にガソリンが少ないだけでした。コックをリザーブにするとすぐに始動。煙は出ますが、これは以前の不具合でシリンダー内に残っていたオイルのせいでしょう。その後、3回ほど走りましたが、煙はほとんど出ません。始動後に僅かに白煙が見えますが、ほら、まだまだ寒いからね。きっと水蒸気だよ。始動直後は水蒸気がよく出るからね。

 

部品の注文

前回、部品の発注から入荷までに異様に時間が掛かり(2ヶ月ほど)、その間作業が出来ずにとても困りました。個人経営の小さなバイク屋さんの場合、部品の発注に必要な端末機器を持っていないケースも多く、そうすると何軒かの業者を介して部品を注文する事になり、時間的にもかなりのロスになります。今回の様に、途中何処かで忘れられるという可能性も高くなります。そこで今回は、ネットで注文してみました。純正部品を扱うネット販売業者は何軒か有るのですが、今回は、

多摩部品販売 http://www.internet-navi.com/tama

を利用しました。便利なのは商品代引きで支払いが出来るという点で、メールで注文すれば後は自宅に届けてくれて、その場で代金を支払えばOK。24時間いつでも注文出来て、自宅まで届けてくれるというのは超便利。送料と代引き手数料が掛かりますが、バイク屋で注文しても送料は掛かるし、注文、受け取りの手間を考えると代引き手数料も高くは無いです。それに明朗会計というのも魅力。個人の小さなバイク屋さんの場合、「まとめて幾ら」という請求の仕方をします。後日再び同じ部品が必要になった時に修理費用の概算が出来るので、僕は正確な部品の価格を知りたいのですが、一応明細を教えてくれるように頼んではいるものの、やたら細かく追求するのも言い難いものが有ります。ネット販売の場合、信用に関わりますから当然明朗会計で、どの部品がいくらするのかがハッキリ分かるので助かります。バイク屋さんが悪いという訳では無いのですが、対応も親切だし、なかなか便利なサービスです。

今回の出費

09289-07002 オイルシール(バルブステム) @420×4

12932-82000 バルブコッタ         @100×8

13383-44B00 ジェットニードル       @1,400×2

09103-08189 ボルト(エンジンハンガ)   @120×2

08319-31085 ナット            @110×2

送料                      600×2

代引き手数料                  300×2

計   4,740円

2度注文したので、送料、手数料が2回掛かっています。カムスプロケットのロックワッシャを頼み忘れてしまいました。やむを得ず古い物を再利用しましたが、ロックワッシャーは新品を使うのがセオリーです。ボルト&ナットはエンジンハンガー(ダウンチューブ前方)のもの。錆がひどいのと、ナットがナメかけなので交換しました。が、どうもスズキはボルト類の管理がイマイチみたいで、何の変哲も無いボルトの発送にやけに時間か掛かりました。どうも、車種毎の管理ではなく、共有出来る物はなるべく共有して管理しているみたいなのですが、ムダを省くのは良いのですが時間が掛かり過ぎ(注文から3週間)。ホンダでも純正部品の供給状況は悪いという話も聞きますので、スズキが特別悪い訳でもないのかもしれませんが、以前ヘッドカバーのボルトを注文した時も妙に時間が掛かっていたので、汎用で済ませられる部分は汎用のボルト類を使った方が良いかも。

なぜかつづく?

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