OHはロト6

DR800Sのエンジン再々々々々修理

05年10月

人生はギャンブル。

恋もギャンブル。

OHもギャンブル?

原因の調査

原因はもうコレしか無い。コレ以外に考えられない。そう思ったバルブガイドも、結局は間違いでした。症状は相変わらずで、症状が軽くなることもない事から、原因は根本的に間違っているようです。分解したシリンダーヘッドを観察して見ると、ヘッドに溜まったオイルの液面より、バルブステムシールの方が上に有ります。と、言うことは、停めている間にオイルがバルブから入る事はないはずです。車屋さんの指摘通り、バルブ周りの問題ではない様です。

そうすると、エンジン始動後10秒程経ってから煙を吐くという症状から、オイルポンプがヘッドに汲み上げたオイルを吸い込むのでは?と考えたのですが、この件に関してDRのメーリングリスト(怪鳥同盟)の方が実際に実験してくれました。プラグホールからオイルを少量シリンダー内に入れて始動してみたところ、始動直後は煙が出ずに、10秒程経ってから大量の白煙を吐くという事が分かったそうです。おそらく熱的な問題だろうということですが、そうすると、最初からシリンダー内にオイルが入っていても、エンジン始動と同時に煙が出る訳ではないという事です。と、言うことは、始動前に既にオイルが入っている、もしくは、始動時〜始動直後にオイルを吸い込む、と思われます。

そもそも、通常シリンダー内にオイルが入る原因となり得るのは、シリンダーヘッドのバルブステムシールか、ピストンとシリンダーの隙間 の2ヶ所しか無いはずです(俗に言う、オイル下がり、オイル上がり)。バルブ周りは前回整備済みなので、残るはシリンダー部分。他にも、ヘッドにクラック(亀裂)が入ったとか、ピストンに穴が空いたとか、特殊なケースも有るようですが、クラックを調べる前に、まずはシリンダーとピストン、ピストンリングを調べてみます。

ピストンとシリンダー内面は非常に綺麗な状態なので、とても問題が有る様には思えません。しかし、そこが盲点だったのかも。ピストンリングも、使用限界まではまた充分余裕が有ります。ただ、オイルリングの検査方法が書いてない為、オイルリングについては調べ様がありません。心なしか張りが弱い気もしますし、シリンダー内に入れると隙間が出来るような気もします。でも、この程度であそこまで酷い煙を吐くんでしょうか。そこで、それら1式を車屋さんに持ち込んで、見てもらうことに。プロなら様々な状況を見てきているでしょうから、これが正常なのか要交換なのか、判断出来るでしょう。しかし車屋さんも100mmを超える測定器具を持っていないので(DRのピストン、シリンダーは直径φ105mm)、車屋さんを通じてエンジン屋さんに調べてもらうことに。結果、シリンダー、ピストン共に問題無いということでした。リングに関してもそれなりの状態で、不調の原因となるとは思えないという事でした。

さて、手詰まりです。ヘッドは直した。シリンダー&ピストンも問題無い。それじゃ一体何処に原因が? ヘッドに亀裂が有る様には見えませんし、ガスケットから抜けた様にも見えません。サッパリ分かりませんが、とりあえずバルブ周りは一新したので、今度はシリンダー部分も整備してみる事にします。一番手軽な方法はピストンリングを交換してみる事なんですが、DRのオーバーサイズピストンは、リングだけ購入することが出来ず、リングを買うにはピストンとセットになってしまいます。車屋さんが親切にもDRに合うリングが無いか探してくれたのですが、残念ながら見つかりませんでした。やはり純正部品を使うしか手が無いのですが、そこで悩むのが、今と同じ0.5mmオーバーサイズピストンを買ってリングを使うか、どうせセットでしか買えないなら1.0mmオーバーサイズを買い、シリンダーをボーリングしなおして、シリンダー&ピストンを完璧に整備するか、という点(値段は0.5mmも1.0mmも変わらない)。1.0mmを使った方が確実ではありますが、現状でも見た目や数値上では全く問題が無い事と、1.0mmを使ってしまうと今後オーバーホールが必要になった時、純正のオーバーサイズピストンが使えなくなってしまう(純正部品としてスズキから供給されるオーバーサイズピストンは、0.5mmと1.0mmのみ)という事から、今回は0.5mmを買って組み立てることにします。今既に走れないエンジンなのに次回のOHの心配までする必要は無いのですが、無駄なボーリング(出費)をする必要も無いでしょう。

作業開始

届いたピストンを測定してみます。マニュアルに従い、スカート端面から20mmの位置の外径を測定。

使用品 105.45mm

新品  105.45mm

全くもって変わらないのですが・・。そりゃそうですよね。ピストンスカート部に施してあるコーティングの様なグレーの塗膜もそのまま残ってるんですから。懸念だったリングも、新品のリングと古いリングを比較しても、合口の開き具合はほとんど変わらず、見た感じヘタってる様子はありません。とりあえずピストン外径が変わらないのが分かったので、せっかくだから新品のピストンと新品のリングを使う事にします。

新品のピストンとリングを組んで、シリンダーを載せます。リングを押し縮めながらピストンをシリンダー内に挿入していくのですが、キツい。あぁん何だか大きいみたい。以前シリンダーを組んだ時よりも、入りが渋い感じがします。見た目は変わらないけど、古いリングはヘタっていたんでしょうか。トラブルの原因はピストンリングだったんでしょうか。これで直るのでしょうか。

ヘッドを組んで、エンジンを載せて、キャブやサイレンサーを付けて、この辺りの一連の作業は以前と何ら変わりません。充電したバッテリーでエンジンもすんなりと始動しました。作業時の画像が有りませんが、過去の作業と同様なのと、夜間での作業の為、画像は省略です。

今回のトホホ ポイント!

一気にエンジンを組んでしまいたいというはやる気持ちを抑えつつ、シリンダーをつけた後ピストンを上下させて、位置決めをしておきましょう。と、思いきや、クランクがロックして回らない!? あれ?ナゼ?どうして?クランクベアリングが壊れた?いや、さっきまでちゃんと回っていたのに、急に壊れるはずがない。じゃあ、作業中にクランクケース内に異物を落としてギヤに噛んだとか。いや、ちゃんと異物が落ちない様に養生していたし、そんな覚えもない。じゃあ何故!? どうして!? 私が何をしたっていうのよ! 猿の様にひとしきりビクともしないクランクを回し、肩を落としつつ組んだばかりのシリンダーを外したところで、ようやく原因が分かりました。シリンダーを組む際に、たるんだカムチェーンがカムチェーンのドライブスプロケットとスターターのクラッチギヤとの間に噛み込んでしまったのです。気付いた時には既に力一杯クランクを回した後で、しっかり噛んでしまってとても外れそうにありません。やむを得ずエンジンを右に目一杯傾けた状態でマグネトーカバーを外し(オイルを入れたままの状態なので、そのままカバーを外すとオイルが抜けてしまう為)、ギヤに噛み込んだカムチェーンをグリグリとほどきます。全く無駄な作業をするハメになって後悔の念に駆られながらしばしカムチェーンと格闘し、ついに解き放つ事に成功したのですが、カムチェーンに掛かったストレスでプレートが変形し、折れ曲がったまま戻らなくなってしまいました。折角新品に交換したカムチェーンは、どれだけも使わないまま使用不能に。

もう、元には戻れないんだね。

さようなら。チェーン。

さようなら。僕の4千円。

シリンダーヘッドを組み立てる時に、うっかりカムチェーンを落としてしまう」という失敗例はよく聞くのですが、「カムチェーンがギヤに噛み込んでしまう」なんて失敗は聞いた事がありません。聞いた事が無いという事は特異なケースなんだろうし、DRの場合はカムチェーンの取り回し方が通常と異なる為、一般的とは言い難いのですが、前回は、「カムチェーンがドライブスプロケットから外れる」という失敗をしたし、(DRの)エンジン整備の際はカムチェーンは要注意です。時間が無いところで無駄な作業+無駄な出費で、涙で視界が歪むのですが、もうエンジン修理も6回目の僕は、この程度の事ではちっともメゲないのです_| ̄|◯

改造ポイント

トラブルの原因を探っている時に、シリンダーヘッドに奇妙な所が有る事に気がつきました。オイルの通路が途中で塞がっているのです。場所はシリンダーヘッドの中央部で噴射されたオイルが流れ落ちる所(画像の白矢印部)で、普通に考えれば左右に振り分けられた通路(黒矢印の穴と白矢印の穴)を通って下に流れ落ちると思うのですが、白矢印の穴が塞がっていてオイルが止まってしまいます。シリンダーと組み合わせると微妙に隙間が出来るのですが、シリンダーとヘッドの間にはゲスケットが入るので、ガスケットで完全に穴が塞がれてしまい、オイルがそこで止まってしまいます。そこで、横に溝を掘り、白矢印の穴からカムチェーントンネルの方へオイルを排出するようにしてみました。

ヘッドの真上で噴射されたオイルは、左右に振り分けられて

白矢印と黒矢印の穴を通って落ちてくる。

行き止まりになっている白矢印の部分にオイル排出用の溝を掘る。

(画像は加工後の状態)

何故かと言うと、ご覧の様にガスケットで穴が塞がれてしまう為。

ヘッドを分解する時にオイルが流れ出てくるので、

あそこには常時オイルが溜まっていると思われます。

シリンダーヘッドに素人が改造を施すのは非常にリスキーなのですが、手を加える気になったのは、元々トラブルを抱えた信頼性の無いエンジンである事と、あそこにオイルが溜まっているとシリンダー内に吸い込む要因となりかねない事、それに以前雑誌で「油冷エンジンは、冷却に使った大量のオイルを素早く戻す必要がある」という記事を読んだ事があり、そういう事もあってあそこにオイルを留めておく事にデメリットは有ってもメリットが有る様には思えなかったからです(DRのエンジンは一応油冷で、あの2つの穴はカムシャフトの下に有るジェットからシリンダーヘッド上部に向かって噴射する冷却用オイルを戻す為の通路の様です)。本当の所はどうなのか、それは設計者でなければ分からない事で、この加工が正しいのか間違いなのか素人の僕には判断出来ません。故に、これを見て加工されてトラブルが発生しても、一切責任は負いませんので、全ては自己責任で行って下さい

 

今回の出費

12111-45B02-050 ピストン(OS:0.5)      15,700

09381-26002   サークリップ          @60x2

09241-30004   ヘッドプラグ           290

12747-44B00   ワッシャー            120

09289-07002   オイルシール          @420×4

12933-37400   スプリングシート        @140×4

13258-44B00   ガスケット(フロートチャンバ) @390×2

13374-44080   Oリング            @170×2

13374-46710   Oリング            @190×2

25652-03D00   カバー              190

送料                        600

代引き手数料                    300

計                      21,020

 

ピストンリングだけで良かったのですが、ピストンとリングのセットでしか購入出来ない為、0.5mmオーバーサイズのピストンを購入。ガスケットとOリングはキャブレターの物。前回オーバーフローしたので、新品に交換しておきます。カバーは、シフトベダルの先端のゴム。いびつな形に磨耗しているので交換。7万kmの道のりは、こんな所まで消耗させるんですね。

 

12760-44B00-106 カムチェーン          3,550

11483-44B11   ガスケット          @1,250×2

送料                        600

代引き手数料                    300

計                      6,950

総計                     27,970

修理途中でトホホに見舞われた為、部品の手配が2回に。しかも、前回注文時のメールをコピペし、確認不充分だった為、マグネトーカバーガスケットを2枚注文しちゃってます。結局古いガスケットをそのまま使っているので、新品が丸々2枚。でも、良いんですよ。DRは定期的にマグネトーカバーを開けて、バランサーチェーンの調整をしなければいけないのですから_| ̄|◯

部品注文時には、部品番号、数量を何度も何度も確認しましょう。

部品番号は変わる場合があります。価格も毎年改定されます。僕が番号を書き間違える可能性も非常に高いです。ですから、純正部品を購入する際は、部品番号と価格を必ずご自分で確認して下さい。ここに記載されている情報はあくまで参考であり、これらにより被害を被っても、一切責任を負いません。

 

で、結局どないやねん!?

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