03年3月
バルブステムシール交換の続き。
今、私は神に一番近い男となった(トホホの神の)。
神は私に試練を与えた。
このトホホを乗り越えてゆけと。
私は悟りをひらいた。私はトホホマスターになろう。そして皆に笑いと情報を提供しよう。
・・・なんて思うわけねーだろ! この右手のバカッ!バカッ!
作業も終りが見えていただけに、後悔してもしきれません。
しかし、反省はしても後悔はしない。得られた結果に向かって突き進むだけだ。
それに前回のメンテレポも長過ぎたから、一区切り付けるには丁度良いじゃないか。
さぁ落ち込んでる暇はないぞ!前を向いて進むんだ!それ行けトホホマスターの道!<違うってば
さて、前回の整備中カムチェーンテンショナー部からエンジン内部に落としたM6のボルトを取り除く為、
せっかく組み上げたシリンダーヘッドをバラしにかかります。もう手順はお手の物。
その後、シリンダーを外す。
本来なら外さなくても良かったのに・・と、思いながらシリンダーを引き抜いて、ふと思う。
「あれ?シリンダー外しても、落としたボルトは見えないんですが?」
・・・およよ・・眩暈がしました。
ひょ・・ひょっとして、クランクケースまでバラさないと、落ちたボルトは取り出せないのでしょうか!?
全然傷んでもいないSRXのエンジンをフルOHしろというのでしょうか!?
コニャニャチワと、飛び出た608ccのピストンを前にガレージ内でガックシと膝をつく私。
しかし、反省はしても後悔はしない!やるしかないんだ!
気を取り直して、マニュアルをよく読んでみる<最初によく読め
ボルトを落としたのはカムチェーンテンショナーの取り付け部です。
と、いう事は、ボルトはカムチェーンの通路の一番底の部分にある可能性が高い。
では、カムチェーンはどこを通って、クランクのどの部分に掛かってるのか、をマニュアルで見て調べるのですが、
なかなかその部分の詳細が載ってません。
やっとのことで見つけました。エンジン左側面のクランクケースカバー内にあるダイナモの奥にカムチェーンが掛かってます。
やった!やったぞ!これならクランクケースを開けなくても済むぞ!カバー外すだけで良かったんだぁ!希望の光が見えてきた!
・・・・・って、ちょっと待て。という事は、ひょっとしてシリンダーもシリンダーヘッドも外さなくて良かったのでは?
およよ・・・眩暈が・・・。無駄な整備で、さらに無駄な事態を招いてる私は正にトホホマスター?
なんて事でしょう。無駄な労力に加えて、シリンダーのガスケット類等、全く無駄な出費まで招いてしまいました。
私は「後悔はしても反省はしない」。もうトホホマスターの名も欲しいがままです(泣)
本来の整備目的、バルブステムシールの交換はシリンダーヘッドをバラすだけで済みました。
だから交換したばかりのエンジンオイルも抜く必要はありません。
しかし今回、成り行き上クランクケースカバーを開けなければいけません。当然オイル漏れます。
泣きながら、まだ綺麗なエンジンオイルを抜きます。SRXのドレンボルトは奥まった所にあって整備性が悪いです。
オイルを抜いた後、カバーを留める多数のボルトを緩めてカバーを取り外します。
あった!やったぞ!あったぞ!落っことしたボルトと涙の対面。
落ちたボルトはコレ(よく見えませんが矢印の辺り)。
狭くて出てきませんが、ここは100円ショップで購入したマグネットキャッチャーが威力を発揮。
このローターの裏側にカムチェーンが掛かっています。
で、どうすんのコレ? 元に戻るんかいな?
たった1本のボルトの為に、全く無意味にバラバラにされたSRXのエンジン。
とりあえず落としたボルトは取り除けたので、後は元通りに組むだけです。
まずは外したクランクケースカバーのガスケットを取り除き、合わせ面を綺麗にします。
ここのガスケットは石綿状の物で、ポロポロと剥がれてなかなか綺麗に取れません。
こんな事もあろうかと、ガスケット剥がし用のスプレーを買っておいたんです。
説明文には固着したガスケットやカーボン、塗料などを剥離できると書いてあります。
って、ちょっと「塗料」はマズイんじゃ・・・?
恐る恐るスプレーしてみると、おおぉ!すっげー!みるみる剥がれるぞ!クランクケースカバーの『クリヤー塗装が』!?
その割には固着したガスケットはなかなか取れません。恐るべし剥離剤。危なくて不用意に使えません。
何とか古いガスケットを剥がして、新品に交換し、合わせ面に2つ使われいるOリングも交換して組みます。
次にシリンダー。ここまでバラしたのなら、ピストンも外して綺麗に掃除した方がいいと思われるかもしれません。
私もそう思います。しかしマニュアルの「ピストンピンのストッパリングを中に落とさないように注意」という
注意書きを読んで、即諦めました。
ピストンは当然クランクケースから出てます。
ストッパリングをうっかり中に落としたら、今度こそクランクケースを割らないと出てきません。
ピストンもピストンリングも傷んでないのに、そんな危ないことは止めとこ。
触らぬバイクにトホホ無し。
さて、無意味に外したシリンダーを組みます。シリンダーを組み付けるのは少々手間。
シリンダーを持ち上げつつ、ピストンリングを縮めながらピストンをシリンダーのスリーブに挿入しなければいけません。
そんな事一人で出来るんかいな?
腕があと2本あるか、もしくは有能なアシスタントが居れば出来そうだけど、腕が4本あったらウチのシャツはみんな着れなくなっちゃいます。
じゃあウチに居るアシスタントはといえば、奥さん@ひ弱なメカ音痴、長女@4才クラッシャー、次女@1才半ばぶぅー、です。
絶望的です。こんな連中に頼むくらいなら一人の方がまだマシです。
シリンダーを持ち上げてピストンの上に載せ、ピストンリングを指で縮めるとシリンダーの重みでピストンが少し入ります。
シリンダーが入るスリーブの下端は大きく面取りしてあって、思ったよりも簡単に入れることができました。
シリンダーがついたら、後は今までの繰り返しです。
シリンダーヘッドを組んで、カムを組みます。
カムはクランクを回してピストンを上死点に持っていき、カムチェーンスプロケットのマークを合わせて組むように書いてあります。
が、カムはどの位置にすればいいんでしょ?スプロケットとカムの合わせ方が書いてないんですが?
カムシャフトを見るとマークというか、穴が空いてます。これをカムチェーンスプロケットのポンチマークに合わせるのか?
とりあえずその状態でカムを組み、ヘッドカバーを付け、作業を全て完了した後でふともう一度マニュアルを眺めてみると、
カムを組み付ける手順の画像ではカムシャフトの穴が私が組んだ状態とは逆向きになってることに気付きました。
おおぉ!?カムシャフトが逆になっちゃったのか?カムタイミング狂ってるのか?エンジン掛からないのか?またバラすのか!?
いや、待て、落ち着け。落ち着け。ここは冷静になって一度よく考えてみよう。
そういえば、クランク側では圧縮上死点と排気上死点は同じだったんだ。
と、いうことは、圧縮上死点か排気上死点かを決定するのはカムシャフトになるはず。
それがスプロケットの組付けで180度ズレたとしても、クランクの上死点が1回分ズレるだけで問題無いのでは?
いや、待てよ、クランクが1回転(360度)回ると元の位置に戻るのに、
カムチェーンスプロケットは180度のズレではカムタイミング狂わないか?
いやいや、そういえば4ストロークエンジンなんだから、クランクが2回転することで1サイクルになるんだっけ。
つまりクランクが2回転するとカムシャフトが1回転するんだから、スプロケット180度分はクランク1回転分なんだ。
あーもう、頭で考えると何ともややこしくて何言ってるのか分かりませんが、つまりクランクのタイミングマークと、
カムチェーンスプロケットのタイミングマークを合わせれば、カムシャフトの向きはどっちでも良いんじゃないのか?
既に液体ガスケットを塗って組んでしまったヘッドカバーを再び開けなくても済みそうです。
忌まわしきカムチェーンテンショナー。
コイツのおかげで・・・! って、私が悪いんですね。
後でカムで悩むことになろうとはつゆ知らず、すっかり組んでしまったヘッドカバー。
隙間が狭くてトルクレンチが使えません。勘が頼り。
マニュアルには何も書いてありませんが、合わせ面は当然ガスケット要りますよね?
ヘッドカバーを組んでから、タペット調整をします。
SRXの場合は3mm幅の四角いボルトが使われていて、専用工具が要ります。
が、まぁいいやって事で、適当な道具を作って調整。
吸気側は調整しやすいんですが、排気側は調整用の穴が狭くてシックネスゲージが上手く入りません。
タペット調整後はキャブを付け、ケーブル類やホーン、エキパイ等を付け、抜いてしまったオイルを入れれば車体は完成。
ただ、ヘッドカバーに使った液体ガスケットの説明文には、完全に硬化するまでには3日かかると書いてあります。
高い圧力が掛かる部分ではありませんが、再度分解するハメになるのもなんですから、3日くらいはのんびり待ちましょう。
今回使用したケミカル類。
左から、スミコーのエンジンコンディショナー(なかなかの効果)、
WAKOSのエンジンコンディショナー(定番でしょうか)、
WAKOSのリムーバー(恐るべし剥離剤。強力過ぎて使えん)、
LAVENのパーツクリーナー(あまり使いませんでしたが脱脂用に)、
スリーボンドのモリブデングリス。
本当は組み付け用にマイクロロンやゾイル等のプレミアムグリスを使いたかったんですが、
近場で入手出来なかったので無難にモリブデングリスを使用。
完成した車体。
よくぞここまで・・って、自分で遠回りしてるんですね。
さて、ヘッドカバーの液体ガスケットが固まった頃を見計らってエンジンを掛けてみることに。
よく、自分で組んだエンジンがかかると感動するとか聞きますが、
エンジンをバラしたとはいえバルブステムシールを交換しただけのこと。
元通りに組んだだけだから、問題なくかかるでしょう。感動はしなくても完動。なんちゃってね。
燃料コックとイグニッションをONにして、チョークを引き、キック!
キック!キック!キック!キック!キック!キック!キック!キック!キック!キック!キック!キック!・・・
かからないんですけど?(T_T) プスンとも言いません。全くかかる気配無し。
バイク脇にヘタりこんで途方に暮れる。
子供が寄って来て「パパのバイク動かないね。」 トホホ・・お前の慰めは要らないよ。
やっぱりカムシャフトの組み方がマズかったのかなぁ。またバラさにゃならんのかなぁ。
とりあえずガソリンが行ってるかどうか見てみようか。
と、キャブのフロート室のドレンを緩めると、あれ?ガソリンが出てきませんよ?
燃料ホースを外してコックをONにするとガソリンが勢いよく出てきます。
ってことは、キャブのフロートバルブが閉じたままってことでしょうか。
キャブの本体をドライバーの柄でコンコンと小突いてみます。
その後、フロート室のドレンを緩めるとガソリンが出てきます。やっぱりココで止まってたんだ。
エンジンを始動してみると、キック3発でかかりました。
はあぁ・・・よかった。ほんとによかった。感動というより、安堵のため息が。
以前よりエンジンの始動性が格段に良くなりました。
始動直後もアイドリングが安定していて止まることがありません。
始動時に白煙も吐かないし、適当に処理したクランクケースカバーからもオイル漏れしてないし、
長かった今回の整備も完了です。
今回の出費
93210−97524 Oリング @530円
1VJ−11351−00 シリンダーガスケット @1,150円
90430−08178 ガスケット @330円
5Y1−15451−01 クランクケースカバーガスケット @1,120円
93210−13361 Oリング @290円×2
消費税 185円
部品送料 600円
エンジンオイル ホンダ ULTRA GP 2L 2,060円
計 6,555円
530円のOリングはシリンダー下部のスリーブ部分に使う大きい物。
290円のOリングはクランクケースカバーの合わせ面に使う小さい物。2個使います。
330円のガスケットはシリンダーの合わせ面に使うOリングのような物。シリンダーヘッド部でも同じ物を使います。
シリンダーガスケットはヘッド同様メタルガスケットですが、ヘッドに比べるとかなり安いです。
掛かる圧力が全然違うので、見た目は似たような物でも何か違うんでしょうね。
クランクケースカバーのガスケットは石綿というか、紙のような薄い物。
エンジンオイルのドレンプラグのパッキンを交換し損ないました。M14のアルミワッシャーです。次回は必ず。