トホホマスターvol.2

03年4月

トホホは続くよどこまでも〜♪

あははぁぁん・・・(突っ伏して号泣)

 

前回、幾多の苦難を乗り越えて完了したSRXのエンジンOH(自分で余計な作業を増やしてただけですが)。

作業完了後に確認すると、エンジン始動時に煙を吐かなくなりました。修理後3回くらいは。

その後、だんだん修理前と同じように始動後に煙を吐くようになります。

まぁ少しくらい吐いたところで始動性が悪いわけじゃないし、煙を吐くのは始動時だけで走行中は問題無いから放っておこうか、

とも思いましたが、どんどんひどくなります。

CRMで全開にしたってこんなには吐かんぞ。あまりの煙にちょっぴり危機感を覚えます。

今のところ始動時の煙さえ我慢すれば不都合は無いのですが、このまま放置して被害を大きくしてもマズイってことで

やむなく再びバラしてみることにしました。整備性が良いのが唯一の救い。

シリンダーヘッドまで外した状態で点検。前回同様、右側の吸気ポート(セカンダリーキャブ側)だけやけに汚れてます。

どうやら原因はこのバルブ周りにありそうです。

明らかに異常な汚れ方をしてる右側吸気ポート。

前回バラした時に綺麗に掃除したので、正常なら左側と同じくらいの状態のはず。

 

そこでバルブを外して点検。シールは特別傷んでる様子も無いし、組み損なってる感じもありません。

バルブステムも傷や磨耗してる様子もなく、ダイヤルゲージで測定しても規定範囲内に収まってます。

バルブステムとバルブステムガイドの間もガタつきはありません。

じゃあ一体ドコが悪いんだ? ポートを見ると明らかにオイルが流入した跡があるから、この辺が悪いのは明らかです。

しかし原因が分かりません。

シールもバルブ本体も悪くないとするなら、疑わしいのはバルブステムガイド?

そういえば前回の修理時もこのポートだけ極端に汚れてました。

よく見るとバルブステムガイドの外側、シリンダーヘッドとガイドのはめ合い部分が汚れてるような気がします。

しかしシリンダーヘッドとガイドはかなりキツイはめ合いで、簡単にオイルが流れ込むようなクリアランスは無いはず。

オイルが流れ込んでしまうくらい緩ければ、ガイドが上下に動いてしまうはず。

う〜ん、分からん。と、いう事で、バイク屋さんに泣きついてみましょう。

バイク屋さんならエンジンOHの経験やノウハウを沢山持ってるはずですから、何らかの手掛かりが得られるかも。

修理は頼まないのに原因を教えろなんて、なんてずうずうしい客でしょう。

しかしバイク屋さんも「う〜ん・・・」。こんな経験は無いと言います。

バルブ周りは一見複雑に見えますが、極めて単純な構造です。

オイルが入る可能性があるのはシール部分しか考えられません。

いろいろ検討した結果、バルブステムシールの組み方がマズかったのではないか?という結論に。

バルブを組む際、バルブスプリングコンプレッサーを締め過ぎると、スプリングリテーナーがシールを圧迫して

シールが傷む可能性も無きにしもあらず、ということです。

そう言われればマニュアルにも「必要以上締めるな」と書いてあります。

バルブコッタを入れる時になかなか上手くはまらなかったので、ひょっとすると締め込み過ぎたのかもしれません。

原因がシールであることを祈りつつ再度シールを注文し、交換することにします。

 

本来ならバルブステムシールの交換だけですから、シリンダーまで触る必要はありません。

しかし今回はピストンも外します。

何故かというと、ピストンヘッドの掃除と、ピストンリングの切れ目位置を合わせたいから。

前回はピストンを外すのをためらってしまいましたが、せっかくバラしたのに汚れたピストンをこのまま放置するのも我慢なりません。

それに、前回シリンダーを組む時にピストンリングの位置がズレてしまいました。

普通、ピストンにはトップ、セカンド、オイルの3つのリングがあります。

それぞれのリングの切れ目が重なり合わないように、切れ目の位置を均等にズラします。

ピストンリングの切れ目の位置が近過ぎると圧縮漏れの原因となってしまいます。

バルブステムシールが届くまでの間に、その辺の整備をすることにしましょう。

そこで、シリンダーを外し、クランクケース内に異物が入らないようにウエスを被せて

ピストンピンのサークリップを外してピストンを外します。

ピストンヘッドは、マークやバルブリセス(バルブと干渉しないように設けてある逃げ。凹んだ部分。)が

分からないくらいにカーボンがこびり付いています。

それをケミカルとブラシを使って掃除。

掃除したSRXのピストン。

600ccともなると径が96mmもあって、いかにもピストンといった感じ。

カーボンの蓄積はあったものの、かなり良いコンディションを保っていた様子。

カーボン除去のついでに、ピストンヘッドを磨いてみました。

96mmと言ってもピンとこないでしょうから、500円玉と比較してみましょう。

ビッグボア!って感じが理解して頂けるでしょうか。

ところでピストンヘッド中央の凸が気になります。 なんなんでしょうねコレ。

社外品のピストンだって表面はツルツルだし、

ピストンヘッドなんて複雑な形状していない方が良いんじゃないのかな?

というわけで、削ってしまえ(ほんとに良いのか?)。

ついでに組み立て時の目印の矢印と、部品番号も削ってしまえ。

排気バルブ側のみバルブリセスがあるから、組み立て時の向きは矢印が無くても分かるからね。

それから、スカート部分を少しだけ面取りしておきました。

シリンダーとスライドする部分だから、角ばってない方が良いですよね。

 

さて、掃除して磨いたところで組み立てるんですが、今回は魔法のアイテムを用意してみました。

その魔法のアイテムとは「マイクロロン アセンブリールブリカント(以下AL)」(詳細は下記参照)。

実はコレを使いたいからピストンまで外したというのもあるのです。

しかし魔法のアイテムだけあって、56gで8000円(税別)とベラボーに高い!

「マイクロロン」の製品で「超高値」というだけで効果を期待してしまうのは、

ブランド物というだけで飛びついてしまうネーチャンと何ら変わらない気もするし、

通常のモリブデングリスなら1000円程度で買えるものを(というかモリブデングリスなら既に有る)、

8000円(税別)も出してそれに見合う効果があるのかどうかも分かりません。

しかし1つ言える事は、

『可動部に塗る』という誰でも出来る事で、わずかながらでもより調子を良くすることが出来る可能性がある』

ということ。

貧乏人が潤滑剤に8000円(税別)も出すのはかなりキビしいですが、

調子を良くする事で、かつ自分が出来る事は出来る限りしてやりたいもの。

あくまでも「調子良くしたい」というのが理由です。

ただ闇雲な潤滑フェチやケミカルフェチでは決してありませんので誤解なきよう。

 

* マイクロロン アセンブリールブリカント 56g(2オンス)入り 8000円

『アセンブリールブリカントは、マイクロロン樹脂(フッソ樹脂加工物)を配合した機械部品(エンジン等)組立て用の潤滑剤です。軽量で取り扱いが簡単、少量で効率良く作業が行えます。組み立てる金属部品の洗浄、脱脂がされている場合には、マイクロロン樹脂の皮膜形成が行われます。』(取扱説明書から引用)

機械組み立て時の初期潤滑に使う潤滑剤のようです。スカイブルーな色が何やらただならぬ物を予感させます。マイクロロンといえばエンジンオイルに添加する製品が有名ですが、この潤滑剤はOH時に可動部に直接塗るため効果もより期待出来そうです。マイクロロンの製品で他にもグリスがラインナップされていますが、説明文を読む限りそちらは通常の整備(グリスアップ等)が主な使用目的のようだし、「エンジンの組み立てに使え」と書いてあるアセンブリールブリカントの方が私の用途に合ってるようです。実際に使ってみると、非常にネチっこくて納豆のように糸を引きます。粘着性が非常に高い割にとても柔らかいので、薄く引き伸ばせて作業性も良好。56gとはいかにも少量といった感じがしますが、薄く塗るので1個あれば1回や2回のOH作業で無くなることもなさそうです。近くで販売している所が無かったんですが、雑誌広告に輸入自動車販売のヤナセで買う事が出来ると書いてあったので、私は近くのヤナセで購入しました。

 

さて、ピストンピン、コンロッドのスモールエンド部をパーツクリーナーで洗浄、脱脂してALを塗ってピストンを組みます。

ビッグシングルの強力な爆発力をモロに受ける軸部ですから、特殊な潤滑剤も使ってみたくなるというもの。

しかし、いざ組もうとするとピストンピンを留めるサークリップがなかなか入りません。

うっかり飛ばしたり、クランクケースの中に落としそうでヒヤヒヤものです。

しかもピストンピンに塗ったALが手についてぬるぬる滑ってもう必死です。

次にピストンリングの切れ目位置を合わせて、リングとシリンダー内面にもALを薄く塗って組み立てます。

シリンダーの次は問題のシリンダーヘッドのバルブ周り。

バルブステムの軸径や、バルブスプリングの自由長も確認してみますが、ちゃんと規定値内に収まってます。

何の異常も見当たりません。古い年式で走行してない期間がかなり長いですが、極めて良いコンディションのようです。

さて、異常が見当たらないので再度バルブ周りを組みますが、

バルブステムシールをバルブガイドに取り付ける前に、必ずバルブスプリングの座金を入れておきます

シールを付けた後では座金を入れることが出来ません(実は間違えた)。

オイルやグリスなどで潤滑しながらシールのリップを傷めない様にシールを取り付け、

バルブステムにもALを薄く塗ってガイドに挿入し、シール部分を慎重に通します。

バルブスプリングは不等間ピッチですから向きを確認して取り付け、

バルブスプリングコンプレッサーでスプリングを縮めながらバルブコッタを入れて固定します。

が、バルブコッタを入れる位置までスプリングを縮めても、スプリングリテーナーとシールの隙間はかなり残されてます。

という事は、前回リテーナーでシールを圧迫したのが理由ではないのでしょうか。

原因がハッキリ分からないのが釈然としませんが、とりあえず組み立ててみましょう。

その後の作業は前回と何ら変わらないので省きます。

カムシャフト、カムシャフトジャーナル(軸受け)、ロッカーアーム等にもALを塗っておきました。

これでデスモ機構も真っ青なフリクションロスを実現してくれることでしょう<んな訳ない

 

一通り作業が完了し、ヘッドカバーの液体ガスケットも硬化したところで、

燃料コックをOFFにしたままスパークプラグを外し、キックを蹴ります。

エンジンをかける前に、整備で無くなってしまったシリンダーやシリンダーヘッド周りのエンジンオイルを行き渡らせるためです。

余談ですが、大抵のエンジンはカムシャフトはベアリング等で保持されてません。

しかもクランクシャフトのようにメタル等も使われていません。

シリンダーヘッドのアルミ材そのものでカムシャフトを保持しているんですね。

(カムシャフトジャーナルの画像はココにあります。バルブステムシール組み付け時の画像参照。)

ジャーナルには当然エンジンオイルの通路が設けられ、オイルの油膜で潤滑しながら保持されるわけですが、

オイルに異常がある場合、一発でオシャカになるのは容易に想像できます。

オイル交換をしなかったり、潤滑系にトラブルが出てシリンダーヘッドがパーになったという話を聞いたりしますが、

そりゃ絶対傷みます。

実際にヘッドを見ると、エンジンオイルの管理には特に注意しようとしみじみ思ったり。

さて、スパークプラグを外しているので圧縮は掛かりませんが、それでも何度もキックするのは結構辛いものが。

充分ヘロヘロになった頃に、エンジンを始動させてみます。

キック1発で始動。あぁ始動性はバツグンなんだよね。サンメカ冥利に尽きるというものです。

あとは煙を吐かなきゃ言う事無いんだけど・・・(-_-;)

心なしかエンジンノイズが減った気がしますが、ALの効果というよりは気分的な問題かも。

でもあの強力な粘着性は油膜も強力そうで、OH時の初期潤滑には良いかもしれません。

8000円(税別)の価値があるのか?と問われれば何とも言えませんが、機会があれば一度お試しあれ。

 

今回の出費

1J7−12119−01 バルブステムシール  @550円×4

93450−24028  サークリップ     @175円×2

             税           127円

             送料          600円

 

マイクロロン アセンブリールブリカント    8,000円

             税           400円

 

             計        11,677円

 

何故か前回とバルブステムシールの値段が違います。まぁ安くなってるから良いか。

サークリップはピストンピンを留める物です。

古い物と新品を比べたら、古い物はヘタってるのが分かります。新品に交換しておきましょう。

シリンダーヘッドやシリンダーを外したので、本来ならガスケットは新品に交換するのがセオリーですが、

お金が無いのでケチってそのまま使います。だってヘッドガスケットって高いんだよね。

今のところ漏れたりはしてないようです。

 

さて、今のところはエンジン始動時に煙は出ていません。

しばらく乗ってみない事には判断も出来ませんが、そろそろこの整備も勘弁して欲しいところです。

特にコレといって思い当たる原因はありませんが、いくつか気になる点がありました。

1 バルブステムに段付き磨耗は無いし、手で触った感じでも傷や段付きは感じられませんでしたが、

バルブを手で動かして見るとシール部分で若干引っかかりを感じました。

バルブが押し下げられて開いた状態の時のシール位置辺りで、ほんのわずかな引っかかりがあるようです。

そこで細かい目のペーパーで磨いて、引っかかりを感じない程度に仕上げておきました。

2 バルブを組む時にスプリングコンプレッサーを締め込んでいくと、手ごたえを感じる時がありました。

スプリングリテーナーとステムシールとの間は充分あるのですが、何か引っかかってるのでしょうか。

スプリングコンプレッサーがお手製でかなり重く、作業性が悪い為、

どこかで無理が掛かった状態でバルブを組んでいるのかもしれません。

ハメバスコンは今後改良の余地有りのようです。

 

上記の事が原因かどうかは分かりませんが、これで直ったとすると、やはり私の整備ミスが原因のようですね。

今後DRのエンジン整備も控えてますし、以後気をつけたいと思います。

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