フロントフォー!!

05年11月

HGなフロント周り修理

やっとエンジンを直したよ。これからガシガシ走るよ。だけど、その前にまだやる事が有るよ。フロントフォークからオイルが漏れてるよ。幸先悪いよ。

 

フロントフォークのオイルシール交換

以前も同様の作業を行っていますので、詳細は下記を参照してください。SRXも内部構造は同じですから、参考になるはずです(特に失敗例が?)。

DRのフロントフォークオイルシール交換作業

SRXのフロントフォークオイルシール交換作業 

早速必要な部品等を揃えて作業開始。フロントフォークのオイルシール交換など、今までのエンジンOHに比べたら屁みたいなもので、ハナクソほじりながらでも出来るっつーの。って、思っていたら、案の定失敗。組み立て手順を間違えました。インナーチューブを組んでから、アウターチューブのスライドメタルを挿入する所を、間違えて先にアウターのメタルを入れてしまいました。過去の失敗が全然生かされていません。しかも「なかなか入りが渋いなぁ」などとのん気な事を考えながら叩き込んでしまいました。もう手遅れ。手で引っ張ったくらいでは抜けません。仕方が無いので逆さまにして、細い鉄棒で叩き抜くしかないのですが、引っ掛かりが浅くてなかなか抜けません。やっとの思いで叩き抜きました。買ったばかりの新品のメタルを(泣)。手順をしっかり確認しながら作業を行いましょう。

もう片方のフォークに取り掛かりますが、あれれ?フォークを分解する為の特殊工具が届きません。右側は作業出来たので、工具に不備がある訳ではないはず。しばし悩んだ末、フォークがストロークエンドまで縮んでいない事に気が付きました。なぜエンドまで行かないか。それはアウターチューブが凹んでいるから(T0T)。左側に転倒した際、アウターチューブをヒットしたのでしょう。ストロークエンドから50〜60mm程手前で止まってしまいます。それで工具が届かないのです。やむを得ずインパクトレンチで分解し、一通りの作業を済ませます。

凹んだ左フロントフォークのアウターチューブ。

下の方(アクスルシャフトから下)にわずかなヘコみがあります。

そこでインナーチューブが引っ掛かってストロークしません。

多分、普通にツーリングに使う程度なら、凹んだフォークでも大した不具合は出ないのではないかと思います。しかし、ダートを走る上でストロークが50mm制限されるのは大きな問題になるし、ストロークが制限されるだけでなく、縮んだ時に引っ掛かって戻りの動きも制限されてしまいます。現に試運転時にダートを走った際、下りのギャップで不意に足元をすくわれる様に感じる時がありました。その時はオイル漏れの影響(左右のバランス違い)かと思いましたが、凹みの影響だったかもしれません。ダートを激しく走るなら完調にしておくべき所です。そこで早速見積もり。結果、

『アウターチューブ左側 価格2万円。

ただし、現在は販売中止になっています。』

という返答が。2万円という価格にもビックリですが、販売中止にはもっとビックリです。3年前のDR750Sの事故での修理の際、バイク屋さんが「フォークがASSY(1式)で出ない」と言って、インナーチューブとアウターチューブを個別に買って直していました。という事は、フォークASSYでも購入不可。単品でも購入不可。91年式以降の後期型とは互換性無し=修理不可能ということに。アウターの内部を切削しようかと思ったのですが、凹んでいるのは先端部分で奥まっているので、素人では困難です。φ41mmのフォークを探してきて移植するとか、いっそのことウチに眠っているCRMの倒立を移植するとか、色々手立てはあるのですが、費用や加工の手間、DRとのマッチングを考えるとどれも現実的では有りません。本当にHG(ひどくガッカリ)なフォークです。

と、まぁ、普通ならここで万事休すなんですが、幸いにも前期型のフォークの部品取りが残っていました。事故で廃車になったDR750Sの部品取車を譲ったKさん宅に、まだフォークが有ったのです。そこでお願いして、800のフォークと750のフォークを交換して頂きました(’88年式750と’90年式800は、アウターは同じですが、インナーの型番が異なります。基本的には同じと思われますが、内部パーツやセッティングが変更されていると左右でバランスが崩れる恐れがあるので、念の為左右とも交換する事にしました。)。

フロントカウルが若干右を向いているとか、フェンダーが若干右を向いているとか、入手時に惑わされたのは、恐らく左に転倒した時の影響なのでしょう。やっとのことでエンジン修理から立ち直ったDR。またもや危うい所で九死に一生を得ました。しかし純正部品の販売中止。先行きに一抹の不安を残します。凹んだアウターチューブも、外見はそれ程酷い状況には見えませんでした。フォークプロテクターは必須アイテムです。

 

ステアリングステム ベアリングのグリスアップ

せっかくフォークを外す作業をするのですから、ついでにステアリングステムの状態も確認するべきでしょう。ステアリングステム部分は、バイクにとって生命線とも言える非常に重要な所です。

分解し、状況を見ると、まだ正常なグリスが残った状態で、ベアリングも傷んでいませんでした。これは幸い。新しいグリスを詰めて、組み立てます。ステアリングのナットの締め加減が難しいです。整備後にステアリングが劇的に軽くなったのですが、ガタつきがない所を見ると、締め付けが緩い訳ではないのかな?上下ともテーパーローラーベアリングが使われているので、ガタが分かり難いのかも。

フォークのメタルも綺麗な状態だったし、ステアリングステムの状態も良かったし、恐らく近年フロント周りは整備されていたのでしょう。

ステアリングステムベアリングの外輪。

上下とも意外に綺麗でした。

 

フロントホイール ハブベアリングの交換

せっかくフロント周りを分解したのですから、この際ハブベアリングも交換しておきます。リヤのハブベアリングがかなり傷んでいたので(こちらは後日交換予定)、フロントも新品に交換しておきたいところ。ベアリングにガタは有りませんが、若干動きが悪い感じがします。高い物ではないので、ベアリングを購入し、作業にかかります。

ベアリングはセンターハブの左右に1個づつハマっているだけで、構造は極めて簡単。ですが、叩き抜こうにもベアリングの掛かりがほとんど無くて、打ち抜けません。サービスマニュアルを見ると、ベアリングの内輪をロックして抜く工具を使うようですが、自宅にそんな物が有ろうはずも無く。そこで、ベアリングを抜くには反対側からマイナスドライバー等の叩き棒で叩く必要があるのですが、反対側からだと奥まっている上、ベアリング内径はφ15mmと小さく、叩き棒の角度が立ち過ぎてしまって引っ掛かりません。しばし抜ける気配の無いベアリングをコンコンと叩き、そして僕は途方に暮れる。これは特殊工具しか手が無いか?と、思ったその時、簡単に抜く良いアイデアが浮かびました。それは、ベアリングを叩き抜くのではなく、カラーを叩く、という手。通常はベアリングを叩いて抜くはず。古いベアリングなら叩いてダメージを与えても、交換してしまうので問題は有りません。しかし、それでは引っ掛かりが浅くて叩けません。そこで、左右のベアリングに挟まれているカラーを叩き、カラーを通じてベアリングを押し出す、という手段。カラーを叩くのであれば叩き棒の角度が取れるので、比較的容易に叩けます。しかも、カラーは中央付近でセンターリングされているだけなので、少し叩けばカラーがズレて、ベアリング自体を叩ける様になります(マニュアルのハブ断面図を見ると良く分かります)。ただし、カラーを叩くのでカラーの内側にダメージを与えてしまいます。綺麗に修正出来なければカラーの交換が必要になりますが、ハブベアリングの交換頻度や特殊工具の事を考えれば、さして問題にならないでしょう。自分で作業するのであれば、ベアリングとカラー1式を購入しておくと良いでしょう。組み立てる前に、カラーにベアリングを叩ける分だけ切削するなど手を加えておくのも良いかもしれません。

フロントハブベアリング。

両側にベアリング、それに挟まれるカラー。

実際は密着してます。

特殊工具を使わずにベアリングを抜くには

黒線のようにベアリングを叩く必要がありますが

角度と掛かりが浅くて上手く叩けません。

そこで、手前のカラーを叩きます。

カラーを通じて左側のベアリングを押し出すという算段。

カラーを壊すつもりで叩けば、比較的容易に抜けます。

ベアリングの組み立て順序は、左側(ブレーキローター側)が先、その後カラー、最後に右側(メーターケーブル側)です。組んだ後、右側ベアリングの外輪部分に、若干のクリアランスを保つためのようです。そうすると、ベアリングインストーラー(ベアリング組み込み用工具)を使うなら良いのですが、専用工具を用いずに叩き込む場合、最後にもう一度左側ベアリングを叩く必要があるかもしれません。ちなみに、フロントは左右でベアリングが違います。右は幅広で、一風変わった2列のボールベアリングみたいです。外径が異なるので、うっかりさんでも左右間違えることは無いはずです。

このベアリングの抜き取り作業、正常な状態を維持しているベアリングと、致命的な状況まで破損してしまったベアリング(極度にガタつきがあるとか、玉が抜け落ちてしまった状態など)とでは、その難易度が全然違います。また、傷んだ状態で乗り続けると、アクスルシャフト(軸)や、ハブ側のベアリングのはめ合い部分もダメージを受ける可能性が有ります。ホイールを外す機会があれば、その都度確認した方が良いでしょう。

 

整備のワンポイント

フォークの整備中に、フロントフェンダーの取り付けボルト部分に使われているワッシャーが無いことに気が付きました。本来ならフェンダーとフォークの間にスペーサーを兼ねたワッシャーが入るはずです。恐らく以前のオーナーか、もしくはバイク屋さんが整備中に紛失したのでしょう。フェンダーに限らず、スペーサーが使われている個所は結構有るのですが(例えばバッテリーケースの取り付けボルト部分や、リヤのマッドガード等/樹脂パーツの固定や、ゴムブッシュを使った固定個所には使われているはずです)、整備で分解した際、紛失したり付け忘れたりしがちです。こんな物無くても構わない様ですが、しかしこのスペーサーが無いとしっかり締め付ける事が出来ません。フェンダーのプラスチック部分が圧迫されて変形したり、ゴムブッシュが潰されるだけでボルトが締められなかったりします。そもそも、g単位の軽量化だとか、1円単位でのコストダウンがなされている国産車で、しかも人目に付かないような場所に使われているパーツで、不要な物など1つだって無いはずです。中古車を買うと、こういう細かいパーツが無くなっている事が良くあります。「まぁ、無くても良いや」と思わずに、整備する時は無くしたり、忘れたりしない様に気をつけましょう。スペーサーは数十円ですが、フェンダーが割れれば数千円の出費になります。脱落して転倒すれば、目も当てられません。「気をつける」という誰でも出来ることで、無駄な出費が抑えられます。

ちなみに無くなっていたフェンダーのワッシャーですが、交換してもらった750のフォークに付いてました。購入する手間が省けて助かりました。

 

今回の出費

09168-12002 ガスケット(オイルドレン)  94

51167-28C00 スライドメタル        @661×2  1,322

51121-28C00 インナーチューブ ピストン  @1,449×2 2,898

51153-44B00 オイルシール         @903×2  1,806

51173-44B00 ダストシール         @724×2  1,448

51148-40300 ガスケット          @147×2   294

69100-44860 ブレーキパッド        5,407

69141-44B00 パッドピン          651

09267-15002 フロントハブベアリング右   2,835

08123-62027 フロントハブベアリング左   861

フォークオイル WAKOS#10 1L   2,940

送料                    525

計  21,081

部品番号は変わる場合があります。価格も毎年改定されます。僕が番号を書き間違える可能性も非常に高いです。ですから、純正部品を購入する際は、部品番号と価格を必ずご自分で確認して下さい。ここに記載されている情報はあくまで参考であり、これらにより被害を被っても、一切責任を負いません。 

ガスケット(オイルドレン)は、エンジンオイルドレンボルトの物。エンジンOH後なので、近々オイル交換する予定。

インナーチューブピストンは、インナーチューブ側のスライドメタル。

ガスケットは、アウターチューブ先端からインナーチューブ内のロッドを固定しているボルトのワッシャー。オイル漏れ防止の為、銅のガスケットになっています。

ブレーキパッドはリヤブレーキの物。磨耗限界で交換。改めて書くほどの事ではないので、作業については省略しました。

フォークオイルはWAKOSの#10。バイク屋さんお任せで頼んだらWAKOSになりました。性能は良いらしいのですが、高い。そして高性能オイルは性能を発揮することなく凹んだフォークと共に旅立ちました。性能にこだわらなければ、ヤマハの#10が安くて良いです。

さて、次はリヤですよ。

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