いきさつ

 

 私がバイクに興味をもち始めた頃はレーサーレプリカブームが始まろうかという時期でした。

オーソドックスなバイクが好きだったので、高性能化を突き進む国産車の中にSRXを見たときは衝撃的でした。

いかにもバイクという外観ですが各部のデザインは秀逸で、美しい中にも力強さを感じさせるもの。

やがて免許は取ったものの、当時貧乏学生だった私には中古車といえど高価なうえ、

車検があるバイクに乗れるはずもありません。

SRXには250もありましたが、600や400に対してデザインは全く別物といった感じでした。

後に幾度か購入を考えましたが、どれも至らず。

限定解除をして600にも乗れる状況になりましたが、そうなるとシングルのスリムな車体が情けなく思えてきます。

当時の私にはシングルの最も優れた利点である「軽量コンパクト」の良さが理解できませんでした。

リッターバイクを持て余したことで再びビッグシングルを検討し、SRXの後期型を探し始めましたが

新車を買う余裕も無く、中古車では特別人気があるわけでもないのに意外に高値。

後期型を試乗していれば考えも変わったかもしれませんが、リッターバイクに乗っている時に

前期型を少しだけ試乗しただけでは良いイメージになるはずもありません。

結局XR600Rを買い、DRに替えて、それはそれで満足しているのですがどうしてもSRXが捨てきれない。

 数年前、私のバイクの師匠であるSさんが突然SRXを所有しました。

友人が乗らなくなったシルバーの前期型600を譲り受けたそうです。

実車を見ると本当に綺麗なバイクです。たまらなく欲しくなります。

Sさんは特別SRXが好きな訳ではなく、逆にバカにしているくらいだったので、

事ある毎に「手放す時は譲ってください」と念を押していました。

SRXはマイナーなりにしばらく売られていたので一時期中古車市場でも玉数が豊富で

格安な物を見かけることもありましたが、SさんのSRXほど綺麗な車体は見たことがありません。

生産中止になり最近では玉数も減る一方で、程度の割には高値がついています。

新たにバイク屋さんでバイクを購入する余裕もないし、程度の割に高値のバイクを買う気にもなれません。

また、仮に手に入れても車検付バイクを2台も走らせるだけの経済的余裕があるはずもありません。

市場からどんどん消えていく不安感はあるものの、慌てて手に入れる必要性もなかったので、

気長にSさんがSRXを手放すのを待っていました。

しかし「一応5万円くらいで」という話でしたが、私が5万円を出すのは並大抵のことではありません。

私が昔から貧乏な事を知っているSさんは転売しない事を条件に「やるから持っていけ」と言ってくれました。

なんて太っ腹な人なんでしょう。Sさんの後に後光が見えました(涙)。

本当は後期型の黒が良かったんですが、タダに勝るものは無し。金も出さずに贅沢を言ってはいけません。

Sさんもしばらく乗っていなかったのでほこりを被っていましたが、持ち帰って早速洗車すると綺麗になりました。

タンクのガソリンを替えておいた方がいいなと思い、タンクを開けると・・・

 我が家に来た念願のSRX。

例え狭いガレージがますます狭くなろうとも、傍から「そんなガラクタばかり集めてどうするの?」と言われても良いのです。

見ているだけでも幸せです。訳も無く眺めたり跨ったりしたくなります。

しかしただでさえ手が掛かるDRがあるのに、SRXのとてつもないタンクを見たら卒倒しそうでした。

こときちに休息の日々は訪れるのか・・・?

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