やるときゃやらなきゃダメなのよ

DR800SのエンジンOH7

04年6月

部品は揃った。

 

なけなしの小遣いをはたいて、OHに必要な部品はほぼ揃えました。先月はSRXのタイヤが1万5千円、今月はDRの部品が1万2千円と、度重なる高額出費に痩せ細る思いですが、どうせなら僕じゃなくて奥さんに細くなってもらいたいところですが、部品が揃えばこっちのもの。後はどんどんガンガン組んじゃうよ。

ガレージ内とは言えホコリが溜まる。

開口部から異物が入らないように綺麗なウエスで包み、

ゴミ袋を被せて保管。と言うか、放置?

時々子供が自転車を出したりする時に、蹴りを入れてくれたりも(-_-;)

エンジンを載せている作業台は、昔GSX−Rを買った時にSBSから貰った

オフロードバイク用木製スタンド。

スズキのエンジンはスズキの台で作業するべきである。

と言うこだわりではなくて、OH作業に丁度良い。

 

シリンダーの組み付け

前回、シリンダーを乗せた所まで済ませました。シリンダーの固定には、ヘッドと一緒に締結する4本のスタッドの他に、6mmの六角レンチで締める長さ100mm位のボルトが1本あります。トルクレンチでトルク管理したいのですが、あいにく6mmの六角レンチのソケットを持っていません。あまり頻繁に使う物でもないし、規定トルクも弱いので、100円ショップで6mmのソケットを買い、それに六角レンチの直線部分を切断した物を入れて、簡易ソケットを作ってみましょう。それでマニュアルの指示に従い、規定値で締めます。ぐぅ〜っと力を入れていき、トルクレンチがカチッとなったら規定トルクに達するんですが、あれれ?カチッとなりませんよ。ぐぅ〜っと回すと、急に軽くなりました。あはは・・嫌だなぁ、まだネジがしっかり入ってなかったかなぁ・・。ぐぅ〜、ぐぅ〜って、いつまでも手ごたえ無くグルグル回ります(-_-;) どうやらネジ穴をナメたみたいですね。

クランクケースのネジ穴をっ!?( ̄◇ ̄;)

あまりの出来事に、お父さんしばしボーゼン。ま・・まぁ、良くある事だよね。対策を考えましょう。シリンダーに掛かる負荷は、主にメインの4本のスタッドで受け持つでしょうし、規定トルクがかなり弱い事から、このナメたボルトはあくまで補助的な物のはずです。また、クランクケース側に空いているナメたネジ穴は、貫通穴になっています。これらを踏まえてざっと考え出した対策方法は、

1 補助的なネジなら要らない。取ってしまえ。

2 規定トルクが弱いなら、メタルパテでネジ穴を埋めて、新たにタップを立て直す。

3 貫通穴だから、少し長めのボルトを用意してナットで締め付ける。

一番手っ取り早いのは1番ですが、いくら補助的でも必要だから有るんでしょうし、ボルトを取ってしまうのは気が引けます。2番のタップを立て直すというのも一見簡単そうですが、穴のセンターに垂直にタップを立てるのはかなり難しい。そこで3番のボルト&ナットという手段が一番堅そうですが、よくよく見ると貫通穴がクランクケースの傾斜に掛かっていて、ナットを締められるスペースが有りません。ナットがきちんと締めれる様にクランクケース外側を削るか?などと、試行錯誤している時に、このナメたボルトがM8ではない事に気が付きました。通常は6mmの六角レンチを使うキャップスクリュー(六角穴付ボルト)はM8(ネジ部外径φ8mm)ですが、DRのエンジンに使われているのは、なんとM7! M7ですよ!? M7なんて僕は生まれて初めて見ましたよ。一般的にはM6、M8、M10のサイズが使われるはずなんですが、DRのエンジンはM7。ひょっとして、かなり適当に行き当たりバッタリで造ったエンジンじゃないんですか? まるでビックリ箱みたいに奇想天外なエンジンですが、これで新たな解決策を思いつきました。現状がM7なら、M8にしてしまおう。M8なら標準的なサイズですから、タップ(雌ネジを切る工具)も有るし、ボルトも簡単に手に入ります。幸いボルトの頭の部分の大きさも一緒のようです。今空いているナメたネジ穴をそのまま使ってM8のタップを立て、同じ長さのM8のボルトで締めましょう。手でタップを垂直に立てるのがかなり難しいですが、ボルトが長いので少しでも斜めになるとボルトが入りません。スタッドと平行になるように慎重に注意しながらタップを立てます。あとはM8のボルトを入れるだけ・・・のはずが、入りませんね。当たり前ですが、シリンダーのボルト穴はM7が通る大きさです。M8では隙間が無くて通りません。次々と湧き出てくる問題点。折角取り付けたシリンダーを外し、ボール盤でφ8.5mmの穴を空けます。が、ドリルが短くて1度に貫通出来ません。1回半分空けて、シリンダーをひっくり返してもう一度空ける。精度は悪くなりますが、重要な所でもないし、とりあえずM8のボルトが通れば良いでしょう。

矢印部分のネジ穴をナメた。

画像はタップを立てている所。

取り付け面に対して垂直に空けるのが難しい。

シリンダーを締結するメインのスタッドも4本のうち1本だけ色が違うし、前回交換しているのかもしれません。7万kmもストレスに曝されてきた訳ですから、外見上は綺麗に見えてもあちこち疲労してるのかもしれません。ちなみにこのシリンダー締結のスタッド、SRでは強靭な材質の物に変更するとスタッドの伸びが少なくなってフィーリングが向上するという様な事が雑誌に書かれていました。巨大なシングルで、かつメインのスタッドが4本しかないDRなら、尚更スタッドを替えた方が良いでしょうね。

 

シリンダーヘッド

シリンダーを再び取り付け、カムチェーンガイドを付け、新しいヘッドガスケットと共にシリンダーヘッドを乗せます。シリンダーとヘッドをクランクケースと締結するスタッドのナットを規定値で締めます。その後、ヘッド前後のスタッド、冷却フィンの辺りにある長いボルト、それと仮締めしておいたシリンダーベースのナット2個とボルト1個をそれぞれ規定値で締めます。これらのボルトを後から締めるのは、先に規定値で締め付けてもメインのスタッドを締め付けると緩んでしまうからです。

カムシャフト

カムを組む時にカムチェーンテンショナーを緩めた状態にしておくのですが、テンショナーを緩めた状態で保持する専用工具が必要になります。当然そんな物はありませんので、細いマイナスドライバーで右に回してテンショナーを一杯まで緩め(縮め)ます。一杯緩めた所でさらに「ぎゅっ」と回すと、あら不思議。ドライバーを放しても緩んだ状態をキープします。その間にカム周りを組んでしまいましょう。カムシャフトとカムのジャーナルには、アイクロロン・アセンブリールブリカントを愛情込めて指先で塗り込んでおきましょう。DRはヘッド周りの潤滑が弱いみたいですから、ここは念入りに塗り塗りしましょうね。しかしDRのカムは組み難い。カムシャフトを乗せてしまうと、カムチェーンをスプロケットに掛けられません。カムシャフトを少しズラして斜めにして、先にスプロケットにカムチェーンを掛けて、カムシャフトを納めつつスプロケットをシャフトに通します。カムチェーンやスプロケットの位置決めピン、スプロケット固定ボルトなど、内部に落としそうな小物が一杯。念入りに、愛情たっぷり塗り塗りしたお陰でとても良く滑って作業性もとても悪いです。知恵の輪状態のカムは要注意です。

ヘッドカバー

ヘッド乗せてカムも組んだら、後はヘッドカバー。今回はロッカーアームまで分解したので、ロッカーアームのシャフトにもアセンブリールブリカントを塗り塗りしておきましょう。ジャムおじさんは「おいしくなぁれ、おいしくなぁれ、と願いながら作ると美味しいパンが出来るんだよ。」って言ってました。一介のパン屋でありながら自らアンパンマン号を製作し、ロケットまで飛ばしてしまうジャムおじさんの言う事ですから間違い有りません。「スムーズになぁれ、スムーズになぁれ。」と願いながら塗り塗りしてみましょう。きっと元気100倍になることでしょう。ロッカーアームのシャフトは、ヘッドカバーの固定ボルトによって位置決めされます。シャフトがズレているとヘッドカバーボルトが入りませんので、ボルト穴から覗いて、シャフトがボルト穴にはみ出さない位置にしておきます。この時ウェーブワッシャーを入れるのを忘れずに。シャフトを入れたら、分解時に壊したメクラボルトとガスケットを新品に替えて取り付け。ヘッドカバーに液体ガスケットを薄く塗布して組み立てます。ヘッドカバーを固定するボルトは締め付けトルクも弱く、それ程神経質になる事もないとは思いますが、折角綺麗に直したエンジンなのにボルトの頭が錆サビなのも頂けないので新品に交換してみました。が、真ん中の4本を頼み忘れてしまい、4本だけサビサビボルト。これってカムシャフトを締結するカバー部分では一番重要な個所の様な気がしますが、面倒臭いからもう良いです。どうせタンクで隠れてしまうんだし。ヘッドカバーまで組んだら、緩めておいたカムチェーンテンショナーを戻しておきます。細いマイナスドライバーで左に回してやると、引っ掛かっていたテンショナーが戻ります。テンショナーを戻したら、タペットの調整もしておきます。

この辺りの画像が全然有りませんが、サービスマニュアルの画像と何ら変わらないので省略です。

マグネトーカバー

今回は一応腰上OHのみですが、バランサーチェーンを交換するのにマグネトーカバー(エンジン左側のカバー)を外しています。古いガスケットを取り除き、新品のガスケットを入れて戻します。カムチェーンテンショナーを張るのを忘れずに。合わせ面にはダウエルピンが有るのでこれも忘れずに。カバーの取り付けボルトは、後方に2ヶ所ガスケットを入れるボルトがあります。ヘッドカバーやシリンダーのボルトに使った物と同じガスケットですが、これまたうっかり注文するのを忘れました。まぁこの辺はさして重要でもないし、後からでも作業出来るし、どうせカムチェーンテンショナーは定期的に張り直さないといけないんだし、古いガスケットをそのまま使っておきます。

塗装

もう既にお気付きと思いますが、OHのついでにエンジンを塗装してみました。14年の月日と7万kmの走行距離で、エンジンの外観も疲れ気味です。特にヘッドカバーのアルミ地が腐食してザラザラになっているので、エンジンを下ろしたついでに綺麗にしたいところ。そこで耐熱塗料を塗りたいのですが、シルバーでは変化が無くて面白くないので、他に何か色が無いか探してみると、ホルツには赤色が、SOFT99には黄色がラインナップされています。ヘッドカバーなら赤でしょ。赤いヘッドカバーは高性能の証。近所のホームセンターには置いてなかったのですが、取り寄せてもらいました。が、しかし、ヘッドカバーを赤色にしても、DRは巨大なガソリンタンクがあるので隠れてしまって見えません。それでは高性能の証も意味が有りません。そこで計画を変更し、シリンダー&シリンダーヘッドを赤、ヘッドカバーは黒にしてみましょう。分解して掃除した後に、シリンダー外側にリムーバー(剥離剤)を掛けて元の塗装を剥がします。ブラシを使って洗油で剥離剤を落としていると、銀色の細かいキラキラ光る物体が見えます。剥離剤はかなり強力でアルミを犯すようなので、吹き付けて長時間放置するのは止めた方が良さそうです。ある程度塗装を剥がしたらシリンダー内やネジ穴をマスキングして塗装するのですが、その前にアルミ用のプライマーを塗っておきます。アルミに塗料が乗りやすくする為の物なんですが、これ耐熱じゃないけど良いんでしょうか。よく分かりませんけど、塗ってしまいます。白色のプライマーを塗り、乾いた後で赤色を塗ります。下地が白なので、明るい色も発色が良いです。良いんですが、何だか赤色と言うよりはレンガ色というか、錆止めの様な色になってしまいました。耐熱塗料は普通の塗料の様に鮮やかな色じゃないみたいです。それでも全体的な印象は変わりました。赤色の高性能エンジン(っぽい)です。これから僕のDRは、DR800S改め、DR787R(っぽい)と呼ぶことにします。油冷エンジンはガンメタというイメージが有りますが、赤も悪くは無いです。シリンダーだけ綺麗だとクランクケースの汚れが気になりますが、どうせアンダーガードで隠れてしまいますからね。すぐにドロドロになっちゃうし。

実際に走行すると、エンジンの熱で変色するかもしれません。プライマーもエンジンに使って良い物なのか疑問です。いちいち言う事ではありませんが、塗装も整備も自己責任で行いましょう。

ビフォー

アフター

こんなにスリムに美しく!(個人差が有ります)

やっと組み終わったよ。

後方上のエンジンハンガーボルト穴に紐を通すと持ちやすくなるよ。

エンジンの積載

組んだエンジンを車体に載せます。その前に準備を。ウチのガレージは狭い。DRのタンクはデカい。外したタンクをそこら辺に置いておくと非常に邪魔な上、子供や奥さんに蹴りを入れられます。そこでOH中は車体に仮に取り付けておき、さらに内部の錆防止の為にガソリンを満たしてあります。29リットルのガソリンが入ったタンクをそのまま取り外すと、エンジンを載せる前に力尽きてしまいそうなので、まずタンクのガソリンを出来るだけ抜きましょう。燃料コックから携帯タンクに移し替えるのですが、20リットルの携帯タンクには収まりきりません。そこで軽トラ。DRのガソリンは去年の8月に入れた物で、使用上は問題無さそうですが10ヶ月ほど放置されています。粗悪な・・いや、やや難有りの燃料は軽トラで消費してしまいましょう。んがしかし、軽トラには10L程度しか入りませんでした。有り余る粗悪・・いや、やや難有りガソリン。どうしよう。あまり入れたくないけど、SRXにも協力してもらいましょう。SRXに5L。さらに20Lの携帯タンク満タンで、ようやく出なくなりました。恐るべきタンク容量です。まるで2輪タンクローリーです。もし山奥でガス欠になったら、DR−BIGを探すと良いでしょう。多分ガソリンスタンドを探すよりも困難だと思いますが。

で、いよいよエンジンを載せます。かろうじて1人で持てる重さですが、華奢でスリムな僕1人ではちょっと心配です。なるべく作業がしやすい様に広くて平坦な所に車体を出して、フレームのダウンチューブに傷が付かない様に水道のホースを適当な長さに切って被せます。車体右側(跨った状態で右)から、エンジンを右のダウンチューブに預け、抱えてオイルパン(エンジン底部分)をダウンチューブの間に入れます。そのままエンジンを押し込んで真ん中に収めたいのですが、シリンダーの前上とエンジン後方のハンガー部分がフレームに当たってすんなりとは入りません。コツとしてはシリンダーを後に少し起こし気味にして、自分はメインチューブを抱えるような格好で左右からエンジンを持ち上げて収めると上手く入ります。下ろす時に苦労したので、載せる時に1人で出来るか心配だったんですが、案外呆気なく載りました。後はハンガーボルトを通して締めれば終了ですが、ハンガーボルトにグリスを塗布しておきましょう。取り外したボルトの中には錆付いてるものもあります。念の為グリスを薄く塗って、錆と固着を防ぎます。また、ナットは新品に交換した方が良いような事がマニュアルに書いてあります。さて、そのハンガーボルト、かなりガタが有ります。特にハンガー部分にブラケットが有る所は、ハンガーボルトのガタと、ブラケット取り付け部のガタが有るので、ガタガタです。ガタが無ければ通せないので当然といえば当然なんですが、組み付け加減によって随分と位置が変わってしまう気がします。で、ちょっと教えてもらったんですが、フロントスプロケットを基準にすると良いそうです。どうもシリンダー付近が重く前下がり気味の様なので、シリンダーの下にジャッキを当てて、気持ち持ち上げ気味で固定してみます。これが正しいのか、これで何か変わるのか、それがライディングに影響するのかどうかはサッパリ分かりません。あまり神経質になる必要もないかもしれませんが、エンジンハンガーボルトを締め付けることでフレームやエンジンにストレスを掛けてしまう様では好ましくないです。

最後の難関、エンジンの積載。

難関と言うほど難しくなかった。

ダウンチューブに水道ホースを被せておくと傷が付かなくて良いと

バイク屋さんが教えてくれました。

積載中にホースが取れないように、数箇所タイラップで固定しておきます。

 

長かったエンジンOH作業もほぼ終了しました。エンジンを下ろしてから再び載せるまでに、1年以上掛かってしまいました。長かったなぁ。色々有ったなぁ。何だか感慨深いです。しかしながら、これで完了では有りません。実際にエンジンを掛けてみて、異常が無いかを確認せねばなりません。しかし、キャブレターが土ぼこりで酷く汚れているし、サイレンサーも錆サビ。とりあえずオイルクーラーを戻して、エンジン内部にオイルを入れておきたいところです。

 

今回の出費

11483−44B00 マグネトーカバーガスケット        1,701

09241−30004 ヘッドプラグ                 430

12747−44B00 ワッシャ(カムスプロケット)         262

08316−16085 ナット(シリンダヘッド)  @157×2   314

11141−44B01 ヘッドガスケット             5,481

09248−14005 ヘッドカバープラグ     @262×2   524

09168−14004 ガスケット(同上)     @105×2   210

09168−10031 ガスケット(カムチェーンテンショナ)     315

01517−06167 ボルト(ヘッドカバー)            157

01517−06257 ボルト(ヘッドカバー)   @157×2   314

01517−06307 ボルト(ヘッドカバー)            147

01517−06358 ボルト(ヘッドカバー)   @147×2   294

09103−06033 ボルト(ヘッドカバー)   @199×3   597

09103−06052 ボルト(ヘッドカバー)            210

09103−06067 ボルト(ヘッドカバー)            210

計   11,166円

送料   1,000円

総計  12,166円  

 

参考(頼み忘れ)

09103−06102 ボルト(ヘッドカバー) 4本

09168−06023 ガスケット       2個

 

参考(塗装)

Holts ハイヒートペイント(赤) MH001  @880円×2缶 1,760円

Holts ハイヒートペイント(黒) ?                 880円

Holts プライマー(白)     MH011             580円

布テープ(マスキング用)                         135円

マスキングテープ(紙テープ)                        78円

税                                    171円

計                                  3,604円

 

耐熱塗料の赤色を2缶買いましたが、1缶で足りました。

DRはエキパイやサイレンサーが鉄製でよく錆びるので、耐熱黒、耐熱銀などは有ると重宝します。

 

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