やるときゃやらなきゃダメなのよ

DR800SのエンジンOH 6

04年2月

組み立てろ!金と気力の続く限り。

 

前回「納期未定」と言われたカムチェーンとバランサーチェーンは、翌週にあっけなく到着しました。が、寒くて作業がはかどりません。寒さと共にやる気が失われていきます。そして春の訪れと共にやる気も徐々に出てきましたが、金が続きません。哀れDR。そうこうしているうちに着手してから1年経ってしまいました。

 

バランサーチェーンの取り付け

さて、まずはバランサーチェーンの取り付けから。作業手順は

1 バランサーチェーンを、チェーンとギヤの合わせマークに従って取り付ける

2 バランサースプロケットギヤを規定値で固定

3 バランサーチェーンガイドを取り付ける

4 クランク軸に、カラー、スターターギヤを取り付ける

5 クランク軸にキーを取り付ける

6 クランク軸にフライホイールを取り付ける

7 フライホイール固定ボルトに緩み止めを塗布して規定値で締め付ける

改めて書くほどの手順ではありませんが、順序を間違えると組み付け出来ませんので、念のため確認しながら行った方が良いです。というのは、実は間違えたからです。フライホイールのボルトを規定値でキッチリ固定した後に、バランサーチェーンガイドを付け忘れた事に気付きました。後からチェーンガイドを取り付けられるほどの隙間は有りません。再度バラす羽目に。フライホイールの取り付けボルトは新品を用意していましたが、流石にやり直しの分までは買ってませんでした。このボルトの締付トルクはかなり強力で、しかもネジロックが塗布してあり緩めるのにかなりのトルクを掛ける必要が有る為、次回の整備を想定して一度外したら新品を使った方が無難。バランサーチェーンガイドはM6の+ネジですが、これもネジロックを付けろとマニュアルに書いてあります。+ネジで、しかもM6ともなるとトルクを掛けるのが難しいので、六角ボルトに変更しました。ただし、ガイドを取り付けるクランクケースはアルミですから、バカ力で締めるとネジ穴がパーになるので注意が必要。ちなみにキーの取り付け順序も間違えないように。スターターギヤをクランク軸に通してからキーです。先にキーを付けると後からギヤは入りません。これも実証済み(-_-;)  それほど傷んでる様にも見えませんが、キーも新品に交換しておいた方が安心。

バランサーチェーンの全貌。

真ん中の軸がクランクで、前と後方上のギヤが2軸バランサー。

カムチェーンは後方上のギヤに掛けられて、

バランサーチェーンを介して間接的に駆動される。

振動面では2軸バランサーの方が有利なんでしょうが、この手間は何だ!?

バランサーチェーンを交換するには、ここまでバラさないと出来ません。

ちなみに、前後のバランサーを繋ぐ直線部分にチェーンガイドが付きます。

付け忘れてますから、当然画像には写ってません。

 

ピストンの組み付け

腰下部分はほぼ終わりましたので、腰上に掛かります。まずはピストンを組み付けましょう。その前に、ピストンスカートの端面を少しだけ面取りしておきます。シリンダーと擦れ合う部分で、なおかつピストンピンで前後に振れる構造ですから、鋭利でない方が良いでしょう。次に、ピストンのピン穴の片側にサークリップを付けておきます。このサークリップが曲者で、なかなか上手く入りません。失敗するとピヨ〜ン!と弾けてお約束の行方不明。丁寧かつ慎重にやろうとするものの、強引にやらないと入る気配がありません。しかし、見るとピン穴付近には傷付いた形跡も無く、前回のOH時にショップの人はどうやってサークリップを入れたんでしょうか。以前、モトメンテナンス誌で、ホンダがサークリップを簡単に付け外し出来る特殊工具を開発中という記事がありました。売ってるんだったら惜しまず欲しいです。何とかサークリップを留めたら、次にピストンリング。リングはトップ、セカンド、オイルのリングが有って、オイルリングは更に3つのリングで構成されている一般的な物。トップ、セカンドは異なる物で、刻印されたマークで判断出来ます。マークが刻印されてる方を上に向けて取り付け、マニュアルの指示に従い切れ目位置を120°毎に均等に割り振ります。トップ、セカンドリングは結構硬くて力が要るので、怪我をしないように、またピストンやリングを傷めない様に慎重に。なんせ0.5オーバーサイズのリングはもう手に入りませんからね。そこまで組んだピストンをコンロッドのスモールエンド部分に取り付けます。ピストンピン、コンロッドのスモールエンド部には、前回SRXの時に使用した「マイクロロン・アセンブリールブリカント」を薄く塗布して祈りを捧げます。そして今回最大の難関である、もう片方のサークリップ。今度はクランクケースの上で作業をするので、うっかり内部に落とすと大変な事になります。ところが、これが奇跡的にすんなりと入りました。いやー、良かった。本当に良かった。もう2度と触りたくないです。

 

シリンダーの取り付け

ピストンを付けたら、今度はシリンダー。シリンダー内部のピストンが摺動する部分に、アセンブリールブリカントを薄く塗布しておきます。今回はマグネトーカバーを外しているので、後からでもカムチェーンは入れれそうなのですが、一応カムチェーンもスプロケットに掛け、引っ張り上げられるように細い針金で吊るしておきます。本来ならカムチェーンテンショナーを縮めておく専用工具を取り付けておくようですが、無くてもなんとかなるだろうということで組んでしまいます。古いシリンダーベースのガスケットを取り除き、取り付け面を綺麗に掃除して、新品のガスケットを乗せます。ピストンにシリンダーを載せ、ピストンリングを指先で縮めてやると、シリンダーの自重で少し入ります。それを繰り返しながらピストンを押し込んでやります。クランクケースから伸びる4本のスタッドボルトがシリンダーブロックのガイドをしてくれるので、簡単に取り付けることが出来ました。シリンダーを付けたら、反時計回りにゆっくりとクランク軸を回し、ピストンを数回上下させ、シリンダー内部の長い六角穴付ボルトを規定値で締めます。クランクケースとシリンダーは、合わせ面のダウエルピンで位置が決まりますが、ピストンを上下させる事で無理が掛からない位置が出るんじゃないかという思惑。しかし、マニュアルにはそんな指示は無いし、シリンダーを固定するボルトが偏った位置にある事などから、ほとんど念のためという意味合い。その他の、シリンダー外側側面のナット2ヶ所、後方のボルト&ガスケット(平ワッシャーの様な物)1ヶ所は、ここではまだ仮締め。この仮締めのナットとボルトは、シリンダーとシリンダーヘッドを共締めするスタッドのナットを規定値で締めた後に本締めします。今回はナットが錆びているので、ナット2個と後方のボルト、ガスケットを新品に交換しておきます。

ところで、シリンダーの取り付け面にはクランクケースを組む際に使用した液体ガスケットが少し付着していました。シリンダーベース部分からのオイル漏れの原因はコレだったのかもしれません。綺麗に取り除いておきました。SRXにはシリンダーガスケットと共に、シリンダーの外周にOリングが付いていましたが、DRにはありません。直接シリンダー内の爆発圧力が掛かる所ではありませんが、巨大なピストンが高速で上下動するのですから、それに伴うポンピング圧もそれなりに有りそうです。その点、素人目にはSRXのエンジンは細かい配慮がなされているような印象を受けます。

バラし始めて幾年月、

1年掛かってようやくシリンダーまで組みました。

まぁ、やる気の問題なんですがね。

 

さて、分解時に調べたカムチェーンの伸び。チェーンの20ピン間の測定値が129mmというのが使用限界で、実測127mmでした。今回新品のカムチェーンを測ると、120mmでした。7mmも伸びてたんですね。やはり交換しておいて良かったです。なお、バランサーチェーンについては長さを測定するのを忘れてしまいました。カムチェーンと共にバランサーも駆動している訳だし、交換が非常に面倒なので、エンジンを分解する機会があれば交換しておいた方が無難です。

 

シリンダーヘッド

今回のトラブルの根源であるシリンダーヘッドに取り掛かります。バルブステムシール、バルブスプリングを新品に交換し、バルブ周りを組み立てます。手順は、

1 スプリングシート(バルブスプリングの座金)をバルブステムガイドに入れる

2 バルブステムシールに薄くグリスを塗布し、バルブステムガイド先端に取り付ける

3 バルブスプリングの向を確認して、バルブステムガイドに入れる

4 スプリングリテーナーをスプリングに乗せ、専用工具で押し縮める

5 バルブコッタを入れる

これも、改めて書く程込み入った手順ではなく、普通に行えば間違え様がありませんが、バルブステムシールの取り付け手順を間違えると困ったことになります。スプリングシートを入れてから、シールです。先にシールを付けてしまうと、後からスプリングシートは入りません(以前SRXで経験済み)。シールはなるべく丁寧に扱いたい物ですから、新品の付け外しはしたくないので注意。シールを付けたら、バルブの摺動部分にアセンブリールブリカントを薄く塗布し、バルブステムガイドに挿入。シリコングリスなどのゴムに対する攻撃性が無いグリスをシールに塗り、シールのリップ部分を傷めない様に保護し、バルブステムを通す時は優しく丁寧に。バルブスプリングには向きがあります。バネピッチが狭い方が下(シリンダーヘッド側)になります。ペンキでマーキングしてある方が上になります。スプリングリテーナーをバルブスプリングに乗せて、バルブスプリング コンプレッサーでバルブコッタが入る位置までスプリングを圧縮します。バルブステムの先端にモリブデングリスを塗布し、バルブコッタをそこにくっつけて作業しました。バルブコッタが小さく、また工具の隙間から作業するのが難しいのでグリスを使いましたが、そういうやり方は何処にも書いてありません。良いのか悪いのか分かりませんので、一応参考まで。

バルブスプリングの新品の寸法を測ってみました

インナー 35.8mm

アウター 41.8mm

使用限界値が

インナー 34.4mm

アウター 40.1mm

だったので、新品から限界値までの余裕は

インナー 1.4mm

アウター 1.7mm

今まで使っていたスプリングのヘタり量は

インナー 1.0mm

アウター 0.8mm

そう高い物でもないし、大きなバルブを動かすにはストレスも大きそうなので、換えておいた方が無難。もう当分はエンジン分解したくないし。

バルブ周りを組みます。

構造はSRXと何ら変わりません。

SRXの失敗を教訓に、バルブスプリングコンプレッサーを見直しました。

名付けて「ハンドメイド バルブスプリング コンプレッサー エボリューション」。

略してハメバスコン・エボ。

本体をアルミ合金製とすることで、大幅な軽量化を達成。

スプリングを圧縮する部分は、DR専用設計のアタッチメントを用意。

これでバルブ周りにストレスを掛ける事無く作業が出来るはず。

SRXと違い車体から降ろさなければ作業が出来ないDRでは、

絶対に失敗は許されません。

 

ヘッドまで組んだエンジン。後は組み立てるだけなんですが、ここであえなく予算切れ。さっさと組んで載せてしまわないと錆びてきそうです。

 

今回の出費

08316−16064     ナット(シリンダー)     @70円×2

09381−26002     サークリップ(ピストン)   @80円×2

11241−44B01     シリンダーガスケット   1,050円

12760−44B00−106 カムチェーン       4,080円

12670−45B00     バランサーチェーン    4,700円

09103−14001     ボルト(フライホイール)   500円×2(失敗分含む)

09420−05007     キー(フライホイール)    260円

09289−07002     バルブステムシール     @580円×4

12920−44B00     バルブスプリングセット   @740円×4

09168−06023     ガスケット         @130円×6

01517−06404     ボルト            110円

 

計      17,560円

税      878円

送料   2,000円(2回分)

総計  20,438円

以前取った見積りと、若干金額が異なる物があります。金額はあくまで目安とした方が良さそうです。ガスケットはシリンダーの取り付けボルトに入れるワッシャータイプの物。シリンダーヘッドカバーの取り付けボルトにも同じ物を5個使用するので、今回ついでに買いました。部品の分割購入をすると、その分送料がかさみます。かといって一括購入する余裕も無く。

次回部品が買えるのは、桜が咲く頃でしょうか・・

 

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